2012年12月20日木曜日

【LNよもやま話 #7 そう言えば昔はこういうのがあったっけ?】

今回は(今回も?)役に立たない話です。
旧バーン社は現インフォア社と同様「製品を買収して連携する+α」という道を突っ走っていました。買収した製品群の一部は今でも残っていて、インフォア社の製品ラインの一部になっています。

<<Open World>>
簡単に言うと、現インフォア社の「ION」みたいなものです。複数製品を連携したり、ワークフローしたり、イベントマネジメントしたりダッシュボードしたりする製品です。2000年頃、Baan5.0cのリリースと共に発表されました。現在も「Integration for LN」という名でLNとの連携機能(LNMS Word/Excelとの連携など)として生き残っています。

<<SchedulerPlanner>>
Schedulerは、元をたどればカナダのBarcrain社のMoopiというスケジューラです。Plannerはボーイング社やフレクトロニクス社にも採用されているグローバルサプライチェーン計画システムです。各々国内にも導入事例があります。現インフォアにおいてはプロセス製造業向けなどのSCMS&OP系ソリューションも取り揃えています。

<<iBaan PLM>>
PLM8と名前を変え現在はInfor PLM Discreteと言います。元はBAINBA Intelligence Networks)社(後にc-Arkと社名変更)のMANTA PDMという製品で、世界で初めてのVisual PDMという売り文句でした。2012年、インフォアはこのPLMを全面的にWEBアプリ化して生まれ変わりました。

<<CAPS>>
現インフォア社においてはSCESupply Chain Execution)の一部機能(TMS)として生き残っています。バーン社がCAPS logistics社を買収し、その後SSA社に売り飛ばしてしまいましたが、SSA社がバーン社を買収し、インフォアがSSA社を買収し・・・結局は現インフォアの製品として生き残っています。

<<bisam/btam>>
かつてのバーン社はデータベースも作っていました。ただしBaan専用データベースです。バカ高い市販DBを買わなくてもBaanが使える、というものでしたが、餅は餅屋ということで2000年位にやめました。軽くて早かったんですけどね。

<<DDCDistributed Data Collection )>>
簡単に言うと、バーコード連携機能です。入出庫や棚卸、製造実績登録などの機能をハンディターミナルで行う為の機能です。VT端末用の画面やプログラムを提供していました。LNになったとたんに無くなりました。
今はInfor Warehouse Mibolity(旧Infor10 BarcodeBridgeLogix)によって、このような機能を実現します。

そんなこんなで、様々な企業や製品を買収していたバーン社でしたが、実はWeb会議のWebEX(現在はCiscoの持ち物)や、SAP社ポータル製品のTopTierは、かつてバーン社の持ち物でした(正確にはバーン社創業者の個人会社のもの)。TopTierは「Baan Data Navigator」と呼んでいました、とさ。

次回は、【LNよもやま話 #8 導入方法論(仮題)】をお伝えしたいと思います。役に立たない話が続きます。

2012年11月27日火曜日

【製造業の基幹システム #4 ○○○という名の宗教】

○○○にはアルファベット3文字が入ります。ERPでもSCMでもSOXでも色々と当てはまる文字はあるかと思います。前回も書きましたが会計・人事アプリケーションと違って、生産管理や販売管理の世界に正解はありません。脈々と受け継がれてきた管理手法や手順が時代と共に変化しながら、その時代に最適なものへと生まれ変わります。

何事も変化しようとする時には、その変化の主導権を握ろうとするために新しい言葉が生まれます。CADCAMは相当古い言葉ですが、PDMPOPMESなども既に古い言葉かと思います。ERPSCMCRMCPMEAM・・・製造業に関連する言葉だけでも相当な略語があります。これらの3文字には「教義」が存在し、教祖様(言い出しっぺ)と宣教師(業界ゴロ)が存在します。

ERP」の教祖はさておき、その宣教師たちは各々の所属する会社、団体が有利になるように教義を解釈し、宣教していました。
ERPを導入しないと不幸になる
ERPを導入するとバラ色の将来が約束される
ERPは管理会計の仕組みだ
ERPはヒト・モノ・カネを最適化する仕組みだ
ERPは人事管理の仕組みだ
ERPを使うと決算が早くなる
ERPには経営判断の為のデータが入っている
ERPを導入すると在庫が削減される
ERPを導入すると納期が短縮される
ERPを導入すると利益率が向上する
ERPによってグローバルスタンダードになる
ERPにお任せあれ~

上記のどれが真実なのかは、ここでは触れません。私を含め90年代からERPに関わっていた人間は、このような文句を垂れながら宣教にいそしんでいました。

ここで話はガラリと変わりますが、「満員電車」という古い日本映画(1957年製作)をご覧になったことはありますか?ERPに関わっている方は必見です。主人公が新卒で勤めた大会社(ビール製造会社)での仕事は、手書き伝票を元帳へ転記する仕事です。来る日も来る日も右から左へ数字を書き写しているだけです。それも大人数で机を並べて朝から晩まで転記です。まさに「人間ERP」です。
私自身がERP導入に関わったお客様で手書きの仕訳伝票からERPに移行した会社が1社だけ有ります。経理部員は各部署から回ってくる売上伝票や仕入伝票を仕訳伝票に記帳し輪ゴムで束ねて会計事務所へ送り、一月ごとに月次B/SP/L、総勘定元帳、などが会計事務所から送られてくる・・・という仕事がERP導入によって全く無くなりました。

もうひとつ似たようなエピソードを思い出しました。20年ほど前の話です。ERPではありませんが共通費の部門別配賦の仕組みをシステム化したことがありました。これは単純な計算の繰返しなので、人間がやると面倒だけれどもコンピュータ(計算機)は最も得意な分野です。システム化以前は、この道ウン十年の経理部員が算盤(そろばん)で計算していたのですが、さてシステムが完成し実データを使った最終テストで段ボール3箱分の計算過程のデータが吐き出されました。ベテラン経理課員は、全ての縦計、横計を算盤で検証した後に「計算、合ってるね・・・」と寂しそうに去っていきました。

話を元に戻すと・・・
私は、ERPは「ビジネスインフラ」だと思います。携帯電話やスマートフォン、パソコン、コピー機、ボールペン、ハサミ、作業机・・・の、様なものです。普通に身の回りに存在し、色々なメーカーの多種多様なものがあり、無くても仕事は出来るけど無いと困る様なものです。
「ウチの会社はERPなくても困ってないし」
という会社もあるかもしれません。きっとERP(のようなもの)を手組みで作っているか、業務別のパッケージを組み合わせて使っているのでしょう。もしかすると「人間ERP」かもしれません。
「ウチの家は水道引かなくても井戸掘るから困ってないし」
どうぞ掘って下さい。

次回は、インド人技術者の話を書いてみようと思います。

2012年11月16日金曜日

【LNよもやま話 #6 Dynamic Enterprise Modeler】

今回はLNBaan)の特長のひとつである「DEM」をご紹介します。
DEMとは「Dynamic Enterprise Modeler(方法論として呼ぶ時は「Modeling」)」の略称です。
「えっ!?『ダイナミック・エンタープライズ』をモデリングするの!?」と思われた方、正解です。
「『エンタープライズ・モデリング』を動的に!?」と思われた方も正解です。
「『ダイナミック・エンタープライズ』って何???」「モデリング???」って方、今回は全然面白くありませんので読み飛ばして下さい。

本来、「ERP」とはエンタープライズのリソースをプランニングするアプリケーション・ソフトウェアですから、最初に「エンタープライズ」をモデリングする必要があります。簡単に言うと自社内外のモノとカネと情報の流れを定義します。
さて、モデリングをどうやって実施しましょうか?紙に書きますか?何かのツールを使いますか?従来の業務モデルや業務フローをそのまま書き出しますか?
そこで登場するのが「DEM」です。DEMはモデリング・ツールであり、モデリング方法論でもあります。
DEMでやること、出来ること>
1.自社内外および、自社拠点間のモノとカネ、情報の流れをお絵描き
2.LN導入拠点ごとに拠点内のモノとカネ、情報の流れをお絵描き
3.情報の流れに応じてLNの各機能とのマッピング
4.(必要に応じて)組織(役割)ごとにLNのデータアクセス権限を定義
5.(必要に応じて)個人ごとのLNメニューを生成

・・・国内外に数十拠点もあるような企業が上記のことをやろうとすると大変な労力を要します。
そこで活躍するのが「EBMEnterprise Business Model)」です。これは、上記の2.と3.のひな型です。ビジネスケース(見込生産、受注生産・・・)ごとに業務プロセスフローがお絵描き済になっています。
「インフォアが作った業務プロセスにはとらわれたくない?」・・・そんな製造業にはEBMは必要ありませんが、製造業向けERPとして世界一高機能なLNを使いこなすことが出来ますか? LNの膨大な機能についてアプリケーション・コンサルタントから全部説明してもらいますか?

と、DEMの良いメリットをつらつらと書きましたが、中堅・中小企業へのLN導入の時にはDEMを使わない方が安く早く導入できる場合もあります。DEMは「複雑に絡み合っている企業の仕組みをシステムに落とす」ためのものですので、最初からシンプルな仕組みの企業へのLN導入に対するDEM効果は小さいです。

ちなみに、DEMは、大昔はオルグウェア(Orgware)と呼んでいました。オルグウェアのプロモーションビデオを見たことが有る人は少ないと思いますが、宇宙ステーションがドッキングするような映像によって業務プロセスがきっちりかっちり組み立てられていく様子を表現してしたものでした。

なお、英語版Wikipediaの「Dynamic Enterprise Modeling」の項には、結構詳細な説明が記載されています。

次回は、【LNよもやま話 #7 そう言えば昔はこういうのがあったっけ?(仮題)】をお伝えしたいと思います。

2012年10月24日水曜日

【製造業の基幹システム #3 開発フレームワーク】

私が製造業の基幹システムに関わるようになった1995年頃、まだ「ERP」という言葉は浸透していませんでしたが、某電機大手の生産管理システムにTrimcsLNの元となったERP)を採用することになりました。
ERPERPとして使うのではなく、パッケージが持っているMPSMRP機能をベースに機能追加、改造して工場全体の生産管理システムを構築するという構想です。
それまでは主に会計・人事系のシステム開発を中心に関わっていましたので、生産管理システムとしては初めての経験でした。そして、会計・人事系のシステムと生産管理系システムとの大きな違いを知ることになります。
<会計・人事系システム>
・目的は省力化
・法令、規制に合わせることが重要
・機能よりもコスト
・ユーザーに女子が多い
<生産管理システム>
・目的は様々
ROIを出すことが重要
・機能要件に限界が無い
・ユーザーはおっさん

私の会計・人事系システムから生産管理系システムへの経験というのは、非常に運が良かったと思います。現在の成熟した(機能満載の)ERPの全体を理解して、それに関わる業務を仕事とすることは非常にハードルが高いと思いますが、私は一歩一歩階段を上るように経験を踏むことが出来ました。

ところで、プロジェクト中の一番の思い出と言えば・・・工場の独身寮を使わせて頂いていたのですが、久しく使用していない部屋だったので夜はチューチューとネズミの運動会、と思いきやコウモリが住み着いていました。

次回は、「ERP」という言葉が浸透し出し、若造だった私が偉そうにゴタクを並べていた頃の話を書いてみようと思います。

2012年9月25日火曜日

【LNよもやま話 #5 世界中のバーン・マニア】

海外には私どころではないバーン・マニアがいますので、2、3ご紹介します。

<<米国i-app社(http://www.i-app.com/)の社長、Dan Aldridge氏>>
彼のブログは強烈です。
Jan BaanBaan社創始者)はロックスターだ!!!
Jan Baanが “SAP is #1 but we’re the best”と言うのが好きだった。
・私の妻は(Baanに命を捧げる)私のことを狂人だと思っている。
・私の問題は「Baan DNA」を持ってしまったことだ。

彼の会社(i-app社)はRestonにあるのですが、かつてBaan社のUS拠点だった建物のすぐ近くです。「Baan DNA」を持った連中で作った会社のようです。
Baan DNAとは何ぞや?」と言う方は、彼の会社のホームページ、そしてブログを読んでみて下さい。バーン・マニアという域を超えています。

<<香港Ziaps Technology社(http://www.ziaps.com/)のChun Yue, Lam氏>>
彼は非常に冷静な目でBaanの過去と現在を分析しています。
Baan Tools(開発ツール)はVBで開発するより3倍の生産性がある
Baanと比較するとSyteLineは小学生が作ったシステム、Dynamics/AXは高校生が作ったシステム。
・ガートナーのLN評価は低すぎる!評価が低い要因に「LNの複雑さ」を挙げているが、確かにLNの機能は深いがシンプルに使うことも出来る。

※彼のブログ(http://ziaps.blogspot.jp/

<<カナダDynaFlow社(http://www.dynaflow-dem.com/)>>
会社としてはBaan教(Baan狂?)信者というよりは「DEM信者」です。DEMというのはBaanLN)に付属するビジネス・プロセス・モデリング・ツールです。
社長のPierre Beaulieu氏は「懐かしのBaanグッズコンテスト」なんてことをやっているので、相当のBaan教信者でもあるようです。
http://www.ez-process.net/contest/index.htm

<<その他多くのバーン・マニア>>
Vinod Gandham氏のブログ(http://baanace.blogspot.jp/)での紹介文は「Hi Baan lovers...」で始まります。
・豪Aptus社のブログではバーン社創業者のJan Baan氏を「The ‘father’ of ERP」と言っています。
などなど、他にも沢山のバーン・マニアがいます。

次回は、LNの特長のひとつ【LNよもやま話 #6 Dynamic Enterprise Modeler(仮題)】をお伝えしたいと思います。若い頃はDEMだけで御飯三杯食えました。

2012年9月10日月曜日

【製造業の基幹システム #2 某外資系日本法人】

1999年頃の話です。
某外資系日本法人へのERP導入の話が来ました。それまで私は外資系の会社に身を置いていながら、ベタベタの日本企業ばかり関わっていたので、この会社へのERP導入においては私自身の転機となることが多くありました。その(転機となった)大きな要因はドイツ人コンサルタントと組んで仕事をしたことです。彼はシステム導入方法論やプロジェクト運営の専門家であったのですが、いわゆる「机上の理論」ではなく、実践的なプロジェクト運営について非常に長けた人物でした。

<<走りながら考える>>
プロジェクト開始時には、どのプロジェクトにおいてもプロジェクト日程表(WBS)を作成するかと思います。そして、大まかな計画から詳細な計画までいくつかのバージョンがあるかと思います。
私がドイツ人コンサルタントと詳細計画を策定していた時、彼はちょっとイライラした様子でした。
「日本人って、ホント細かいよね」
ん?ドイツ人も結構細かいのでは???
彼曰く、
ERPの導入において、「誰が何をどうするか」は走りながら考えるべき。
・プロジェクト期間中にギャップや課題を出し続けるのだから、将来の詳細計画は意味が無い。
・なので、プロジェクト期間中には「詳細計画策定」のタスクを必ず入れよ。
・プロジェクトメンバーの負荷を平準化することはプロジェクトの目的ではない。
とのこと。
なるほど、確かに。
毎週金曜日の夕方はプロジェクト主要メンバーで「翌週の詳細計画を立てる会」を実施するようになりました。
組織でがんじがらめになっているような大会社においては、このやり方は通じないのかもしれませんが。

<<困難な課題>>
システム実装中に、ある課題がありました。棒状の資材を切断して製品に組み込むのですが、その資材は受注時に長さが決まるので、どれだけの長さの資材をどれだけ在庫しておけば良いかわかりません。かと言って、受注してから資材を発注していたら、お客様が望む納期に間に合いません。私を含めたプロジェクトメンバーはウンウン唸りながらあーでもない、こーでもないと計算式と格闘していると、ドイツ人コンサルタントが一言、
「そんな無駄な検討をする暇があったら他のことを検討しようよ」。
プロジェクト一同、「は!?」。
彼曰く、
・すぐに答えが出ないのであれば、今まで通りのやり方でやればよいでしょう。
・その答えが大きな利益を創出しますか?検討に時間を掛けるということはコストを垂れ流していることと同じですよ。
とのこと。
なるほど、確かに。

<<日本人としての特性>>
ドイツ人コンサルタントと一緒に仕事をすることによって、「日本人であること」と痛烈に感じざるを得なかった訳ですが、「日本人であること」とは一体何でしょうか?
個人的な意見かもしれませんが、日本人の根底にあるものは
「不安」
ではないでしょうか。
・失敗に対する不安(やらない)
・変化に対する不安(変わらない)
・大っぴらになることに対する不安(隠す)
など。
不安だから、みっちりとした計画を作り、「計画通り」に進行すると安心します。
不安だから、目の前の課題を解決しないではいれません。
もちろん、日本人以外でも多かれ少なかれ不安を持って生きていますが、彼らはあっけらかんと失敗しますし、新しいことを創出することが自らの価値と思っています。

ところで、前回予告で「私が肥った原因になった」と書きました。その理由は・・・この会社へ4カ月ほど通う間に「甘~いコーヒー飲料」にハマってしまいまして、それから私の主たる飲料は「甘~いコーヒー飲料」になってしまいました。

次回は、私が製造業の基幹システムに関わるようになった頃の話を軸に書いてみようと思います。

2012年8月21日火曜日

【製造業の基幹システム #1 私の経歴について】

私は1990年代半ばより、製造業向けERPに関わる仕事をしています。その間に関わった企業は約500社です。その間に製造業(私にとってはお客様)のシステムに関する考え方の変化を感じています。
この【製造業の基幹システム】シリーズでは、その数百社の様々な立場の方からお話を聞き、そして私が感じたことを書いていく予定です。
私の専門は基幹システムですので、「製造業のシステムの話」と言ってもCADMESPOPなどの話は出てきません。主に、
・なぜコンピュータ・システム(ERP)を導入するのか?
・コンピュータ・システム(ERP)を導入する為にはどうすればよいのか?
・コンピュータ・システム(ERP)を導入するとどうなるのか?
・もし、コンピュータ・システム(ERP)を導入しないとどうなるのか?
などの観点で、思うままに書いていこうと思います。

なお、世の中にはこのような書籍が沢山存在しますので、多くの方が常識と認識しているようなことを書くつもりはありません。そのような意味では、皆様が参考になるようなことが文章中に出てくるとは限りませんし、私自身が誤解・誤認識しているようなことが有るかもしれません。また、専門用語の解説などをするつもりもありません。

数百社の製造業の中には、数百人日以上関わったお客様もいますし、残念ながら数人日程度のお付き合いのお客様もいらっしゃいます。一昔前には○○(製品、人、手法、etc.)を知っているというだけで「コンサルタント」と名乗っている方も沢山いらっしゃいましたが、情報だけであればWEBから直ぐに取り出せる時代になりました。お客様が成功、成長するための方法も多種多様になり、コンサルタントという職種を職業にすることが難しい時代になったのかもしれません。

・・・と、いうようなことを、書いていく予定です。
次回は、私が肥った原因になった某外資系日本法人の話を軸に書いてみようと思います。

2012年8月10日金曜日

【LNよもやま話 #4 代表的な導入事例】

今回は、LNBaan)の代表的な事例をご紹介したいと思います。

<<ボーイング>>
「製造業のERPと言えばLN」となった、Baan社が飛躍する元になった事例です。
LNは、1994年から標準機能だけでボーイングが使えるERPをひたすら追い続けていました。
ボーイング社がERP導入を検討した背景には下記のようなことがあります。
・元々は軍用機向けのシステムで民間機の工場を管理していたのでビジネスプロセスが合わない
・競合(エアバス)の出現により、早く安く製品を市場に出すことが必要
・「基幹システム」と呼ばれるものが400以上も混在し、業務改革できない
LN(当時はTRITON)が選択された理由は下記のようなものです。
・柔軟性
・オープン性
・バーン社のコミット(ボーイング社の機能要件を標準機能に取り込む)
実は、LNの前身であるBaan5には「ボーイング社専用バージョン」が有りました。
そして、LNBaan6)がリリースされた時は(市販バージョンではなく)「(機能盛りだくさんの)ボーイング社専用バージョン」が元になっています。
・・・実はボーイング最新型の787工場のERPは、すんなりLNに決まった訳ではありません。他の型式(737747757767777)の工場は全てBaanが稼働していましたが、改めてERP選定が実施されました。そして、LNが選択されました。

<<フェラーリ>>
フェラーリの様々な資料は殆ど英語ではないので、私の誤解があるかもしれませんが・・・
フェラーリは1999年から2002年にかけて業務改革を行いました。
それ以前からLN(当時はBaan)が使われていましたが、この時にBaanの特性をもっと生かそうということになりました。まず取り組んだのが全ての部品の計画方法の定義です。完成車の生産工程を20日と定義し、20日にするには各部品をどのように計画すべきか(見込在庫?受注してから調達?他)をBaanのマスターに定義しました。後はBaanに任せて・・・
実はこのやり方はボーイングの取り組みとそっくりです。もしかしたらボーイングのやり方を真似たのかもしれません。
それからフェラーリ社は近代化することに成功し、とうとうF1マシンにインフォアのロゴが貼られるようにもなりました。
また、インフォア社が2011年発表した製品、「ION」の先行事例でもあります。

<<コマツ>>
日本企業で最大級(拠点、ユーザー数)のLN導入事例です。生産系ERP事例としてはERP業界でも最大級かもしれません。
コマツがBaanに決めた時(1997年)、現会長の坂根さんが社長、現社長の野路さんがCIOでした。
最初にドイツの拠点から導入をはじめ、海外主要拠点、そして国内拠点、国内関連会社へと次々と展開していきました。
実際のERP導入に関しては多くの現インフォア社社員やパートナー、関係者と、こちらも日本最大級の方々が関わっています。

<<東京エレクトロン>>
日本企業のユーザとしてはコマツよりも古い事例です。
最初は海外拠点への導入だったのですが、当時(1994年)はバーン社日本法人が無く、複数の国内代理店が導入に参画していました。
当初海外の一部拠点から始まったLN導入も、現在では世界数十拠点(日本含む)で使われています。日本の工場での導入においては他社のSCM製品との連携がミソでした。現在のインフォア社日本法人が入居しているビルの1フロア下には東京エレクトロンの関連会社が入居しています。これも何かの縁かもしれません。

<<TDKラムダ(当初導入時の社名は「デンセイ・ラムダ」)>>
今回取り上げた中で、私が唯一導入プロジェクトに直接関わった事例です。
ERP導入のきっかけは、TDKラムダの母体となった「ネミック・ラムダ」と「日本電気精器」という2つの会社の合併です。
2001年秋より導入プロジェクトが始まりました。プロジェクト体制は日本人数人とインド人との混成チームです。プロジェクトルームはとてもスパイシーでした。キーボードの横に生のニンジンを積上げ、ポリポリ食べているインド人もいました(しかも女性)。
2003年、日本の全拠点を稼働後に海外拠点も順次稼働しました。
プロジェクト期間中には色々とスパイシーな話もありますが・・・ここには書けません。
導入当時のCIO熊澤さんは「日本の情報システムリーダー50人 ビジネス戦略とIT活用の実例(ソフトバンク クリエイティブ刊)」で最初に紹介されています。

次回は【LNよもやま話 #5 世界中のバーン・マニア(仮題)】をお伝えしたいと思います。
私などが足元にも及ばない変人が沢山いるようです。

2012年8月6日月曜日

【LNよもやま話 #3 Baanが関連する書籍】

前回の予告通り、Baanが関連する書籍についていくつかご紹介します。
<<チェンジ・ザ・ルール!>>

エリヤフ・ゴールドラット 著 三本木 訳 (ダイヤモンド社刊)

序文「旧友のソフトウェア開発メーカー、バーン社を経営しているポール・バーン氏から連絡があり・・・」
と、いきなりバーン社が登場します。
本文は、架空のERPベンダーを主体に話が進みます。
「マギー、中小企業を相手にするには、利益が増えることをちゃんと示すことができないといけないと言ったじゃないか。つまり、バリューだよ。それをどう提供すべきか、その方法がやっとわかったんだよ」

・・・結論は​本書にて。


<<世界一の製造力から世界一の経営力へ>>

バーン ジャパン 他共著 (リックテレコム刊)

Baan5がリリースされた時に刊行されたBaanのコンセプトや機能の解説書です。10年以上前に刊行された本ですがLNのコンセプトを理解する為の入門書として十分使えるかと思います。

<<日本製造業、逆転のストーリー 企業再生―グローバル・オンリーワンに一気に迫る業務変革とERP>>

本荘 修二 監修  バーンジャパン 編集 (ダイヤモンド社刊)

ゴールドラット風にERPの導入を小説仕立てにしたものです。日本でのBaan導入事例をベースに書かれているのでゴールドラット本より読みやすいかもしれません。

【洋書】

<<The Way To Market Leadership, My Life As An Entrepreneur>>

Jan Baan

バーン社創始者Jan Baan(ヤン・バーン)による自伝です。自分年表もあります。
表題は英語版のものですが、オランダ語版、ドイツ語版などもあるようです。

【映画】

<<「De uitverkorene」(2006年オランダでのTV映画)>>

主人公は「Laan」兄弟です。JohanPeterというLaan兄弟が共同経営しているソフトウェア会社における、兄弟の苦悶を描いた映画です。残念ながら私自身は見ていませんが、各種​映画レビューを見ると映像がとても美しい映画のようです。一応フィクション映画ということになっていますが、Baan兄弟およびBaan社のドキュメンタリーのような映画です。
どなたか日本語字幕を付けてくれると有り難いです。

次回は、【LNよもやま話 #4 導入事例(仮題)】をお伝えしたいと思います。

2012年7月27日金曜日

【LNよもやま話 #2 製造業のERPと言えばBaan】

Infor10 ERP Enterprise (LN)は、その前身であるBaanの時代から「製造業向けERP」のトップレベルとして評価されていました。評価の元となったのは「ボーイング社、フェラーリ社などの世界トップレベルの製造業が他社ERPと比較検討して採用したERP」ということが一番大きいのかもしれません。
もちろん、
1. 複雑なことをシンプルに整理する(DEM: Dynamic Enterprise Modeler
2. 変化に対して迅速にかつ柔軟に対応する(オープンなアーキテクチャー)
3. ROIApplicationEnterprise ServerPorting Set3層構造によるTCOの削減)
という一貫したコンセプトとそれを実現するための製品機能が製造業に評価されたということが言えるでしょう。

それでは、日本の著名な製造業は全部Baan?・・・と思われる方がいらっしゃるかもしれません。それには「日本の」製造業におけるいくつかの特殊性を考慮する必要があります。
1. 合議制(個人的責任の回避)(シンプルなことを複雑に検討する)
2. 長いモノにまかれろ的判断(今までやってきたことが一番正しい)
3. IT部門と経営陣との距離がある(ROIではなく、コストと捉える)

エリヤフ・ゴールドラットの著書「チェンジ・ザ・ルール!」の序文に、「変化に対応するためのシステムとは、現在市場にあるシステムを12%のコード改変することと30%のコードを削除することで実現できる」とあります。
変化に対応するためには、シンプルにすることであり、その結果としてROIがあるということです。すなわち、最初に書いた「製造業向けERPのコンセプト」と同一です。

次回【LNよもやま話 #3 Baanが関連する書籍(仮題)】で、「チェンジ・ザ・ルール!」の他、Baan社およびBaanが登場する書籍や関連する書籍をご紹介したいと思います。

2012年7月20日金曜日

【LNよもやま話 #1 LNの歴史】

不定期にInfor10 ERP Enterprise (LN)の役に立つ話、役に立たない話を投稿していきたいと思います。

第一弾はLNの歴史についてです。(●会社の歴史 ◎ERP製品の歴史 ○顧客の歴史)
2006 Infor社がSSA Global社を買収・統合
2004/08 LN出荷開始(以降はほぼ一年ごとにマイナーバージョンアップ)
2003 SSA Global社がInvensys社よりBaan社を買収・統合
2000 Invensys社がBaan社を(子会社として)買収
1999/04 Baan 5.0c出荷開始
1998/12 Baan IVc4出荷開始
1998/09 Baan 5.0b出荷開始
1998/03 Baan IVc2出荷開始
1997 ○コマツとの契約締結
1996 Triton 3.1b出荷開始
1994 ○ボーイング社との契約締結
1978 Financieel Managemant Begeleidingsbureau Baan (Baan会計コンサルティング事務所)を開業

気付いた方もいらっしゃるかもしれませんが、昔はBaan IVBaan 5.0を併売していました。現在のSyteLineLNの関係と似ています。1999年から2004年までは(休んでいた訳ではなく)特定顧客向けバージョンをリリースしていました。
さて、会計事務所として出発したBaan社はなぜ「製造業向けERPの雄」となったのでしょうか?これには創業者Jan Baanの実弟Paul Baanの存在が大きく関係します。つづきは【LNよもやま話 #2 製造業のERPと言えばBaan(仮題)】にて。

写真は、Tritonのベースとなった「Baan Manufacturing Contorol System」の機能構成です。(出典:HP CHANNELS April 1988