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2015年5月26日火曜日

【製造業の基幹システム #15 ERP導入の成功と失敗】

今年に入ってから隔月での更新になっています。

「ネタが尽きた?」

いえいえ、そうではありません。実は沢山の原稿は既に執筆を終わらせています。毎月の公開前に客観的に読み直して、次から次にボツにしているうちに2カ月が過ぎている、というのが実情です。ボチボチと公開しますので気長にお待ち下さい。

 

さて、各ERPベンダーやパートナー各社のホームページには「導入事例」が紹介されていることが多いかと思います。そこで紹介している事例は、いわゆる「成功事例」ですが、何を以て「成功事例」ということができるのでしょうか。

ERPを導入後に経営に寄与するような効果があった。

ERPを使って業務が円滑に運用されている

などの事項が当てはまる事例が成功事例と言えるのかもしれませんが、ERPを提供する立場からみると、これらのような事項のみでは「成功事例」としてホームページ等に記載することはできません。重要なのは、

ERP導入企業の責任者が、そのERPもしくはベンダーを宣伝してくれるか?

と言うことです。

 

ERP稼働10年経過したA社を、ERP稼働直後のB社にご紹介させて頂いたことがあります。B社は稼働直後にトラブル続きで、業務運用にも支障をきたしかねない状態でした。

B社「このERPで、よく業務運用が出来ていますね~」

A社「?」

B社「どうやって○○業務の管理をやっているのですか?」

A社「○○のデータを使って分析するような仕組みを作りました」

B社「どこに開発を依頼されたのですか?」

A社「自分達で作りましたけど」

B社「うちには、そのようなスキルを持っている人がいないのです」

A社「うちにも居ませんでしたが、勉強させました」

 

A社の方は「別に大したことをやっているつもりは無いんだけどなぁ」という感じでした。

このままの状態では、恐らくB社が「成功事例」となることは永遠にないでしょう。B社のERP責任者が、そのERPを宣伝することは無いですから。

その後、B社は、ERPの責任者が変わり、「色々あったけど、自社のERP導入は成功した」という事例発表を行いました。もちろん、B社のERP運用については日々改善を進めていましたが、ここで重要なのは「『成功』と宣言した時点で『成功事例』になる」ということです。

同様に、「失敗」と宣言した時点で失敗事例になるとも言えますが、失敗事例をわざわざ公にするベンダーはいません。「これをやらないで失敗した」「これをやったので失敗した」という話は、公では無い場所でこっそり尋ねてみて下さい。

2014年11月28日金曜日

【製造業の基幹システム #14 ERP導入体制】

今回は「ERPの導入体制」について書きますが、ぼやっとした話になるかもしれません。なぜならば「これが正解」という導入体制は無いからです。とは言っても製造業向けERPを導入するために必要なタスクは概ね決まっていますから、主に異なるのは自社リソースと外部リソースの役割および責任分担です。

例えばインフォア社にはOPIMOne Point Implementation Methodology)という導入方法論があります。これにはERPの導入において必要なタスクを漏れなく定義されていますが、これさえあれば、全てのERP導入プロジェクト計画が出来上がりという訳ではありません。

ERP導入プロジェクト体制を立案するに当たり、

・文化

・予算

・歴史

などを考慮する必要があります。よって、全く同じスコープで同じ導入規模であっても導入に関わる外部費用は大きく異なる可能性があります。

例えば、企業文化(体質)は最も大きく導入体制や、費用に関係する事項かもしれません。ERP導入に最も適さないのは「縦割りで丸投げ」文化です。事業の全体像を分かっていて(部分最適では無く)全体最適を目指して「有るべき姿」を描くとこができ、意思決定し、実行することが出来る人は誰もいないかもしれません。このようなERP導入の根幹に関わるような事項を外部のコンサルタントに委託することも可能ですが、このようなコンサルタントは非常に高価です。しかしながら、ここでケチると必ずERP導入は失敗します。自社の文化は「風通しがよく、部門間の隔たりがなく、自由に意見を言える環境で、親分肌のマネジメント層も沢山いる」という企業は、外部コンサルタントはアドバイザー的な役割でよいかと思います。

そうは言っても、予算には限界が有りますから、「お絵描き」や「資料作り」をばかりをやっている優秀(で高価)な外部コンサルタントを沢山雇っても、いつまでもERPは稼働しません。「有るべき姿」に対して、ERPをシミュレーションして、実際にERP上で業務が運用できるかどうかを検証する必要があります。もしも自社でそのような「手足」としてのリソースが不足するようであれば、これも外部から調達する必要があります。

また、企業の歴史もERP導入体制に影響を与える要素のひとつです。「大きく変化し続けた歴史が我が社の歴史」という企業はERP導入が最も容易な企業かもしれません。変化を経験し、その変化にどのように対応したかというノウハウはERP導入に際して貴重な経験です。もし自社内にそのような人材がいるのであれば、プロジェクトに是非とも参画させるべきです。もし、自社の歴史において大きな変化もなく、そのような経験をした人材もいないのであれば、「企業が変化する時に何が起きるか?」を分かっているコンサルタントを参画させるべきでしょう。

もちろん、「ERPとは何か?」を分かっている人材、導入するERPの詳細を理解し、説明出来る人材も必要です。一般的には、ERP導入プロジェクト初期段階で自社プロジェクト中心メンバーがERP機能のトレーニングを受講しますが、数週間から数カ月でERPの隅々まで理解できる程ERPは甘くありません。そこで、ERPを熟知したアプリケーションコンサルタントを外部に委託することになります。

さて、ここまで述べたことをまとめると

1.将来像を描き、変化を予測することが出来る「頭脳」

2.黙々とシステムを検証する「体力」

3.ERPの機能を知り尽くした「知識」

の3つにおいて、自社リソースに不足している分を外部から補うことでERP導入体制が完成します。

もちろん、自社業務を理解している人材をプロジェクトに参画させることは必須です。この人材は外部から調達することはできません。

え?自社業務を理解している人が居ない?

ERP導入は、もう少し後にした方が良いかもしれません。

2014年10月29日水曜日

【製造業の基幹システム #13 ERPの選定について】

前回は「次回は楽しい話が書けたらいいな」と終わったにも関わらず、余り楽しくない話になりそうです。

さて、いきなりですが

ERP導入を検討している製造業のほとんどはERPを選定する能力がない」

と思います。

頭に「日本企業の」と付けてもいいかもしれません。

多くのERP導入を検討している企業は次のようなステップで選定を進めるかと思います。

1.課題の認識

2.情報収集、調査

3.新システムの目標、目的の明確化

4.新システム構想策定

5.各社へ提案、見積依頼

6.提案、見積結果の評価

7.最終選定・契約

これらのステップのいくつか、もしくは全てに外部の人間を参画させていますか?もしくは自社の選定プロジェクトメンバーに他社でのERP選定・導入経験がある人物は含まれていますか?

財務会計や人事給与システムであれば、「なんとなく使い易そう」「プロマネやる予定の人はいい人そうだ」「初期費用が一番安価だ」という選定方法でよいのかもしれませんが、生産管理を中心とした製造業の基幹システムをそのような基準で選定していいものでしょうか?

綿密に自社の仕組みや候補としたERPの仕組みを調査・検討・評価しているから大丈夫という訳ではありません。逆に、自社の文化や業務、既存のシステムを知り尽くした人ほど、自社ERPの選定においてはネックになる場合もあります。

なぜならば、ERPの選定、導入には必ず取捨選択が必要だからです。「この機能は絶対に必要」「この画面では業務は回らない」・・・本当にそうでしょうか?かつて良く言われた「ERPはベストプラクティス」という言葉は好きではありませんが、自社で思い描いた新システム像を押し通すことによる様々なリスクやデメリットがあることを忘れてはなりません。

もちろん、選定を外部へ丸投げすることも避けるべきです。培ってきた自社の文化や強みを新システムに吹き込むには必ず自社のメンバーが責任ある立場で選定することが必要です。

『提案プレゼンテーションが上手な会社が必ずしもERP導入が上手とは限らない』

ということを十分に認識する必要があります。

これらのことを踏まえたERPの評価・選定は、ERPの選定・導入を経験した人ではないと不可能です。はっきり言います。不可能です。

冒頭に書いた

ERP導入を検討している製造業のほとんどはERPを選定する能力がない」

とは、そのような人がERPの評価・選定に参画していない場合のことを言っています。

そして、そのような場面に良く遭遇するということです。
 

2014年9月30日火曜日

【製造業の基幹システム #12 製造業向けERP業界】


私は約20年間「製造業向けERP業界」で仕事をしていますが、この業界内部のことも少しお話ししたいと思います。もしかすると、この業界に興味がある学生の皆さん、この業界へ転職しようとしている社会人の皆さんに少しばかりお役に立つかもしれません。


20年以上前、私は「総合商社オンラインシステム」や「公益法人会計システム」など製造業とは関係ない業界に関わっていたという話は以前に書きましたが、これらの業界と「製造業」に関わる人たちは文化も考え方も全く異なります。

バブル時代の商社は裏方であるシステム関連の人たちも皆さんが想像されるような「バブル」のイメージでした。女性は前髪が「竹輪」、男性のスーツと言えば「ソフトスーツ」です。公益法人の方は経理部の方が「算盤」で計算しているという時代でした。

同様に、製造業には製造業のノリ(文化)があります。製造業に関わる方々と一緒に仕事をするためには「製造業のノリ」を理解し、そのノリに乗ることが重要です。


昔は生産管理システムに関わる人は「生産管理ヲタク」が多かったのですが、「ヲタク」と言っても強面のおっちゃんです。いいモノを早く、安く作るために日夜考えて検証、実践しながら業務とシステムの仕組みを作ってきたおっちゃんです。このようなおっちゃんに「欧米系生産管理パッケージソフトウェア」を採用して頂くことは至難の業でした。

まず、言葉が通じるようになるまでが大変です。メーカー毎に方言があり、「製番」「工番」「作番」などはその一例です。部品表の呼び方も「BOM」「BM」「PS」と様々です。歴史のある会社では数十年、もしかすると百年以上使ってきた言葉を簡単に変えることはできません。そのようなおっちゃんに「ERPはベストプラクティスで・・・」というようなセールストークをしてもコテンパンにやられてお終いです。

今では、そのようなこだわりの固まりのようなおっちゃんも随分減って「使えるものは何でも使う」というおっちゃんが増えてきましたが、他国、他業種と比較すると日本の製造業はプライドが高く、頑なで「うちの会社は特別だから」と言って欧米型生産管理パッケージを採用するハードルはまだまだ高いと思います。

そのような高いハードルを越えることを楽しみに感じる方はこの「製造業向けERP業界」に向いていると思いますが、そうではない方はかなり辛いかと思います。一言で表すなら「知的好奇心」です。私は数多くの製造業向けERPの営業職や技術職の方と接してきましたが、どちらの職種においても「知的好奇心」が少ない方はあっと言う間に潰れてしまいます。

もうひとつ、この業界に従事する人に必要なのは「柔軟な頑固者」という資質です。財務会計システムなどの「答えがあるシステム」と違って生産管理システムは「答えがないシステム」です。お客様の課題解決やシステム要件を柔軟にかつ確たる軸を持ち、大胆にかつ繊細に実現するには「柔軟な頑固者」である必要があります。お客様と表面上仲良くするだけで立派なシステムが実現するようであれば誰も苦労しません。お客様と真剣な喧嘩が出来る位の根性が無いと製造業向けERPの営業職も技術職も務まりません。


ちょっと辛辣な話になりましたね。次回は楽しい話を書けたらいいなと思っています。

2014年8月13日水曜日

【製造業の基幹システム #11 機能が豊富なERP】

申し訳ございません。久しぶりの投稿です。

恐らく、Infor LNは製造業向けの機能が世界一充実しているERPです。Infor LNを乗用車に例えると、「フルオプションの大型高級車」です。走る・止まる・曲がるという基本機能はもちろんですが、前後左右独立のオートエアコン、最高級オーディオ、シートヒーター/クーラー付電動調整シート、様々な走路を想定したセッティング切り替え機能なども装備されています。近所の買い物に乗る程度であれば過剰装備かもしれません。ところが、時と場合により近所の買い物も長距離の高速道路も、たまには砂漠も走行することがあるのであれば、どのようなところも快適に走行可能なクルマが必要になります。「泥道でスタックしたらクルマを捨てて歩くか、泥まみれになってクルマを持ち上げるから大丈夫」というのであれば、無改造のファミリー・カーでラリーに参戦してもよいかもしれません。

私は、様々な製造業のお客様からERP選定の相談を頂いた際にあえてInfor LNをお薦めしない場合があります。「近所の買い物にしか使わない」車を探している人に最初から大型高級車を薦めしないのと同じことです。

要は、企業の大小に関わらず「Infor LN向き」の会社と、そうではない会社があるということです。

単純な製品を繰返し生産し、製品需要も部品供給も安定し、仕入先も販売先も国内のみ・・・という企業は「Infor LN向き」ではありません。装備過剰な大型高級車で近所のスーパーマーケットに買い物に行っているようなものです。駐車場に停めるだけでも大変です。このような企業には例えばInfor SyteLineのようなERPをお勧めします。見栄を張りたいというなら話は別ですが。

製品の部品点数が飛行機並みに多い、製品需要と部品供給のバランスをとりながら製品納期を短縮するのが難しい、仕入先や販売先、自社製造拠点や販売・サービス拠点は世界中に拡がり業務の見える化や整流化を行うのが大変・・・という企業は「Infor LN向き」の企業です。

IT投資額は売上の○%が適正」という都市伝説がありますが、これはITを「省力化の道具」としてのみ捉えた場合の話です。いくら省力化しても抜本的な組織の見直しや業務プロセスの改革を行わない限りは○%の収益改善が限界だからです。

IT投資を「利益を生む投資」として捉える場合は、「売上の○%」という公式は当てはまりません。IT投資によって産み出される金額は、各々の企業の改革内容によって異なるからです。例えばInfor LNを導入したA社は、製品の生産工場移管期間を1年から2-3カ月に短縮しました。これは直接的に利益を創出する効果ではありませんが、経営判断を迅速に実現するインフラを整備したことになります。またB社はInfor LN導入前には(全部繋げると)75mあった業務フローが、導入後には25mに短縮されました。50mにおよぶ業務プロセスを無くすこと(例えば外注先への「有償支給」を止めて全て「無償支給」に変更)により、「部品在庫、製造リードタイムの30%減」という効果としてあらわれました。

これらの効果はERPを単なる便利ツールとして使うのではなく、ERPを活用した企業改革により産み出されたものであり、売上の○%と表すことが出来ない効果です。

ちょっと脱線してしまいましたね。

要するに、Infor LNはこれらA社、B社のようにチャレンジを続ける製造業にこそ向いているERPであり、その豊富な機能が生きるということです。

貴社もInfor LNに乗って、グローバルの荒波を超え世界トップクラスの製造業になってみませんか?

2014年4月25日金曜日

【製造業の基幹システム #10 ERPの生まれと育ち】

昨今では全く新しいERPブランドが出てくることはほとんどなくなり、かつてのERPが淘汰され生き残ったものが、各々進化しているような状況です。さて、一言で「ERP」と言っても(「ERP」と名乗っていても)各ERP製品のコンセプトや目指しているものは様々です。

私は、各企業がERPを選択する時に一番注目しなくてはならないのは「ERPの生まれと育ち」だと思います。ERPのような業務横断型の統合パッケージは、ある日突然誕生したのではなく、元になるアプリケーションソフトウェアがあり、そこから拡張してERPを名乗っているものがほとんどです。これが「生まれ」です。また、各ERPは初期~中期の利用企業による各ERPへ機能追加要求があり、機能拡張を繰り返してきました。これが「育ち」です。

例えば、Infor LNは、組立製造業向け生産管理システム(BMCS)から生まれたERPですが、他のERPには会計システムから生まれたERPだったり、プロセス製造業向け生産管理システムから生まれたERPだったりするものもあります。

また、生まれた「地域」にも注目する必要があります。世界中で使われている多くのERPは欧州生まれです。元来欧州では多国籍企業が多く、異なる文化や習慣、法令や規制と接しながら事業を行ってきました。このような企業文化の中で生まれたシステムは、生まれた時からDNAとしてのグローバル機能を持っています。また、欧州各国は近年において多くの「変化」を経験してきました。通貨統合はもちろん、国の存在そのものが変化した国や地域も数多くあります。このような変化に対応するシステムでなければ欧州では生き残れません。

私自身はオランダ(Infor LNの生誕地)の会社、イギリスの会社、米国の複数の会社に所属してきましたが、欧州と米国の企業文化は全く異なりますし、DNAレベルでのシステムの思想が異なります。

さて、ERPとして生まれたシステムは、各ERPベンダーの企業戦略によって成長するのですが、育ち方によっては良くも悪くもなっていきます。かつて私が関係した米国系ERPベンダーは昨年日本法人が無くなりましたが、これも企業戦略のひとつです。Infor LNもかつては様々な業種業態へ対応するような戦略(例えば、BaanIVにはプロセス製造業向けモジュールがありました)をとった時期もありましたが、インフォア社に買収された以降は「組立製造業向けERP」としてターゲットを絞っています。これも企業戦略のひとつです。また、新バージョンに追加される機能は、多かれ少なかれ既存ユーザーの要求仕様が反映されます。組立製造業をターゲットにしたInfor LNは、組立製造業が必要とする機能をこれでもか、という位に詰め込んできました。あえて対象業種を絞り込むことにより、その業種が必要とする機能をバージョンアップ毎に反映しながらも複雑性を抑えることに成功しています。このような「お客様に育てられる」という側面も忘れてはなりません。

このような「生まれと育ち」に注目すれば、おのずとERPの選択肢は数少なくなり、無駄なERP検討やERP選定の時間を節約することができるのではないでしょうか?

2014年2月5日水曜日

【製造業の基幹システム #9 ERPを「ERP」として使う】

大企業、中堅企業には「ERP」が普及してきましたが、ERPを導入済の会社の中でERPを「ERP」として使っている会社はどれ位あるのでしょうか?

改めて言うことではないのかもしれませんが、ERPとは「Enterprise Resource Planning」です 。直訳すると「企業資源計画」とでもなるのでしょうか?私は、それぞれの単語の中に「ERP」の本質があるかと思っています。

Enterprise

CompanyではなくEnterpriseと称しているところがERPの本質を表しています。海外拠点を含む企業グループ全体、生産管理を含む企業の基幹業務全体をERPで管理している企業はどれ位あるのでしょうか?「グローバルで会計システムをERPで統一している」というのは、私にとっては本来のERPの定義とは異なります。

 

Resource

企業の資源とは何でしょうか?ひと昔前は「ヒト、モノ、カネ」という言葉が使われていたかと思います。ERPを導入していても「モノ」の管理は別の生産管理システムや倉庫管理システムで管理している企業が多く見受けられます。ERPは魔法の箱ではありませんので企業の全業務を枝葉末節までカバーしているのではありませんが(文書作成や表計算は専用ソフトを使った方がよっぽど効率的です)、企業内の基幹業務(すなわち、全ての枝が繋がっている「幹」の業務)においてはERPで管理することにより「ヒト、モノ、カネ」を効率的に管理することが出来るかと思います。

 

Planning

ERPは実行系のシステムと思われがちかと思います。では何故「Planning」という言葉が使われているのでしょうか?これもひと昔前の言葉で「PDCAサイクル:plan-do-check-actサイクル」というのが有りましたが、その「plan」するために必要なものは何でしょうか?占いでplanする企業にはERPは必要ないかもしれません。ほとんどの企業は「精緻で矛盾が無い実行データ」を元にplanしているかと思います。ERPは実行系業務を精緻で矛盾なく管理し、よりよい計画をする為の仕組みである、と私は思います。

※もちろんERP内にも様々な計画機能を持っています

 

以上、3つの単語を改めて考えてみた後で、もう一度質問です。ERPを導入済の会社の中でERPを「ERP」として使っている会社はどれ位あるのでしょうか?

2013年12月18日水曜日

【製造業の基幹システム #8 ERP導入会社の選択】

私はERPを扱うSI会社からERPの経験を開始し、複数のERP開発元に属して現在に至ります。その中で数多くのERP導入会社やコンサルタントに接してきました。ERPはセミオーダーのスーツみたいなものですから、最後の仕上げをする会社(人)によって出来あがりは大きく異なります。

また、その会社(人)の優劣ではなく、自社(自分)にとって最適な会社(人)を選択することが非常に重要になります。

 

スーツに例えると、

・自分の好みをくみ取ってくれ、自分に合った色や形を提案してくれる会社(人)

・自分の色や形に対するこだわりを忠実に再現してくれる会社(人)

・縫製技術に優れている会社(人)

・安く仕上げてくれる会社(人)

・早く仕上げてくれる会社(人)

・話が面白い会社(人)

などの会社(人)がいます。全てが満たされるような会社(人)はいません。なぜならば1番目と2番目の項目は相反する項目だったりするからです。

そこで必要であるのは、「自分にこだわりがあるかどうか?」です。

あなた

「来月妹の結婚式がある。くたびれたスーツしか持ってないからボーナスも出たことだしスーツを新調するかな」

と思ったとしましょう。いきなり紳士服の○○に行きますか?デパートの紳士服売り場に行きますか?それともインターネットで情報収集しますか?

人によってそれぞれかと思います。

スーツにこだわりが有る人であれば、自分の思い描くスーツを仕立ててくれる店に目星がついているか、もしくは下調べをするでしょう。

スーツにこだわりが無い人であれば、とりあえず店に行って店員のお勧めを直ぐに購入するかもしれません。

どちらも正解です。

不正解は、スーツにこだわりがあるにも関わらず下調べもせず飛び込みで店に入って、馴れ馴れしい店員に安っぽい生地やボタンを薦められ「私が欲しいのはこんなスーツじゃないのになぁ・・・」と思いつつ買ってしまうか、もしくは店を出て時間を無駄にすることです。

その逆も不正解ですね。こだわりがないのにサッサと買わずに店員とのムダ話で時間を無駄にすることです。こだわりがある人が行くような店では無い限り、店員は売り手の論理で薦めているだけだと言うことに気付くべきです。

ERPの導入会社やコンサルタントも同様です。何でもいいから早く安く仕上げたいのか、こだわりを持ってERPを導入したいのかにより相談、委託する会社(人)は異なります。

また、セミオーダーのスーツでもERPでも「安価」「高価」には必ず理由があることを肝に銘じておく必要があります。

2013年11月19日火曜日

【製造業の基幹システム #7 計画系システム】

私は製造業向けERPに関連する仕事に従事していますが、一般論としてERPは業務管理系のシステムであり、いわゆる「計画系」と呼ばれるシステムは別途構築する場合も多いかと思います。

狭義での「計画」機能はEnterprise Resource Planningという名の通り、ERP本体で需給計画や資源計画機能などを有しているかと思いますが、一般消費財の需要計画や複雑なグローバルサプライチェーン計画、計画の策定と評価や分析などには、各々の計画専用のシステムを活用することにより、より最適な「計画」を自動的に立案することも進んでいるかと思います。

・生産計画(APSPlanningScheduling
・プロジェクト計画
・配送(配車)計画
・購買(調達)計画
・(最適)在庫計画
・販売(需要)計画
・人員(配員)計画
・設備投資計画

・・・まだまだ沢山の○○計画がありますね。 

また、これらの計画機能をERP本体に有していたとしても、あえてERP外で計画した方が良い場合もあるかと思います。

例えば、
・複雑なシミュレーションを繰り返す為、ERP全体のパフォーマンスに影響を及ぼす
・商流や生産に直接関係しない人員計画
ERPで詳細定義をすると山のように会計仕訳を生成する
のような場合、計画機能はERPの外で処理した方がよいかもしれません。

要するに、ERPの導入にあたっては、
ERPにはより確定に近い状況のデータを処理する(現場を混乱させない)
ERPには在庫、会計に関わるデータを処理する(ムダなデータを蔓延させない)
ERPは幹の業務プロセスを管理する(枝葉をキレイに剪定する)
という基本指針が必要です。

ひと昔前は、これらの計画系アプリケーションとERPとの連携がネックとなっていたりしましたが、昨今ではアプリケーション連携技術も急速に発展、標準化されてきました。また、様々なアプリケーションをひとつのアプリケーションの様に「見せる」技術も発展し、「色々なアプリケーションを使い分けるのも面倒くさいなぁ」ということは減っているかと思います。

また、製造業向けERPに関しては、ERPで莫大な部品のMRPを回すと処理時間がかかるので、MRPだけ外出しのオン・メモリ高速MRPで処理するようなことも盛んに行われていました。これも昨今のオン・メモリDBの発展などによりERP自体が高速化していますので、単に高速化だけを実現するアプリケーションは衰退していくでしょう。

そのようなシステム的な制約よりも業務的な役割分担によりERPと計画系アプリケーションとの分担を決定することが多くなってきたからこそ、各計画系アプリケーションの本質を見極める必要性が高くなってきました。「早い/遅い」「出来る/出来ない」よりも「本質的にどちらで処理すべきか?」ということです。

すなわち、ERPを「精度が高い業務データを矛盾、重複なく流す」ことに徹し、それ以外の「流れない(行き先が無い)データ」「グルグル回っているだけのデータ」「ある時点のみをとらえたデータ」はERP外で管理すべき、だと私は思います。

2013年4月26日金曜日

【製造業の基幹システム #6 製造業のグローバル・システムの変遷】


ここ数年の製造業の基幹システムの新規実装および見直しの話(私の本業)は、海外拠点の話が非常に多くなってきています。もちろん業種業界によっては随分と前から海外に製造拠点、販売拠点、サービス拠点を設け、とっくの昔に海外売上の方が国内よりも多い企業というのはあったと思いますが、多くの企業においては(どちらかと言うと)海外拠点の基幹システムは(日本から見て)ほったらかしになっていたのではないでしょうか?

 

1980年代~90年代前半>

製造業の海外製造拠点は、自動車関連などに限定され国内向けはともかく、海外市場向け製品も国内で生産し輸出するという形態が主であった。また、海外製造拠点の基幹システムについても、システムらしいシステムは無く、紙、電話、FAX(テレックス)などが主な情報伝達、情報蓄積手段だった。図面、保存帳票などはマイクロフィルムも活用。

 

1990年代後半>

多くの業種で製造拠点の海外進出が進み、海外拠点の情報システムも、アプリケーションやネットワークの発達に伴い、基幹業務のシステム化が推進された。

まだ、グローバルでの情報一元管理や活用を行うには、システムインフラ(ハードウェア、ネットワーク)の性能(費用)がネックになり、拠点ごとにバラバラのシステムやExcelによるローカル管理になっている製造業も多かった。

 

2000年~2008年>

中堅規模の製造業でも、海外に生産拠点を設立したり、海外メーカーと協業、買収したり、グローバル・サプライチェーンの裾野が広がっていった。基幹システムにおいてもシステム・インフラの急速な発展により、グローバル最適化を基本にしたシステム構想を立案し、実現していった。コンサルティングファームやSIerは様々なグローバル・システム展開の方法論、手法、サービスメニューなどを開発したが、「ひとつのERPで統一」という手法が多かった。

 

2008年~2010年>

「ひとつのERPで全世界統一」という手法に対して、コスト、スピード、リスクなどの観点から別の手法を模索するようになった。設備投資の落ち込みはシステム投資にも波及し、その観点からも最小コストで自社に最適な基幹システム構築を模索していた。例えば2tier ERPやベストオブブリード、ハブ&スポークなど。

海外販社の基幹システムをクラウドで行う会社も出てきたが、海外生産拠点の基幹システムをクラウド化する事例はほとんどない。

 

2011年以降>

データ保有コストが下がったことによるビッグデータの活用やオン・メモリシステムの台頭、クラウドサービスの拡大、ソーシャル・ネットーワークの法人利用など、様々なITシステムの新テーマが出てきた。これは従来のシステム・インフラである基幹業務システムの業務機能的な成熟により、情報システム業界から仕掛けた面もある。

製造業の基幹システムにおいては、拠点進出時にその拠点の将来構想に応じて適切なERPパッケージを利用すること(「ExcelAccessでローカル管理」をしない)が常識となり、その上で基幹システムに様々な付加価値を求めている。

 

と、ここまで一般論的なことを書きましたが、要するに「10年前の常識は通用しない」ということです。私がERPに関わりはじめた90年台半ばには製造業側にもシステム屋にも「生産システムについて一家言あり」という人が沢山いました。以前の投稿でも書きましたが会計システムは答えがあるが生産システムには答えがありません。10年前までは「こういうおっちゃんがERP導入の障壁になるんだよな~」と生意気なことを思っていましたが、今は「こういうおっちゃんが居なくなったから日本の製造業(生産分野)におけるERP導入が進まないんだよな~」と思います。特に、伝統と歴史ある企業では、現在の生産システムのコンセプトや工場の文化について「俺が全く新しい仕組みを作ってやる!!!」という人をほとんど見なくなってしまいました。そういう時代の流れも日本の製造業の凋落に関連しているというのは言い過ぎでしょうか。

 

次回は、MRPAPSSCM、そしてS&OPなど計画系システムの話を書いてみようと思います。

2013年1月24日木曜日

【製造業の基幹システム #5 インド人技術者】

はじめにお断りしておきますが、以下の文章は決してインドの方を誹謗中傷するものではございません。素直で単純な「純日本人」から見たインドの印象と捉えて頂ければ幸いです。

10年程前まではERP実装の仕事をしていましたので、様々なパートナー企業の方々と寝食を共にしました。その中でも思い出深いのは某インド系の会社との共同プロジェクトです。
ERPを導入するスコープは会計、生産、購買、販売、在庫、原価・・・という「基幹系業務」と呼ばれるほとんどの業務領域を日本の全生産拠点、全営業拠点、全物流拠点、そして海外の主要な生産拠点、販売拠点へビッグバンで導入するというものです。
主に開発や海外拠点導入などをインド系の会社へ委託していました。以前にもベトナムの日系企業へのERP導入をシンガポール人と一緒にやったり、ドイツ系やスイス系、シンガポール系(華僑)企業の日本法人へのERP導入を現地の方と実施したりしていましたが、色々な意味でインド系の方が一番印象に残っています。
<プロジェクトのはじめに>
プロジェクトの最早期にインド人2人を連れて、お客様の工場を訪問しました。夜に歓迎会を開いて頂いたのですが、某地方都市のカラオケ屋で「ボリウッド」の世界を堪能させて頂きました。音楽が聞こえると踊らずにはいられないようです。首を左右にクネクネする、あの踊りです。
<工場での食事>
2人のうち一人はベジタリアンでした。地方都市の工場の昼食は社員食堂以外の選択肢はありません。最初のうちはカレーの肉を除けて食べたり、うどんの麺だけすすっていたり(スープも魚介なのでダメ)しましたが、面倒になったのか朝の通勤時に食パンを一斤買って食パンばかり食べていました。
<インド人の女性>
さて、本社のプロジェクトルームに戻り沢山のインド人に囲まれて仕事をしていたのですが、一人のインド人女性は毎朝パソコンの横に生のニンジンを数本並べ仕事中にポリポリ食べていました。皮をむかずにそのまま食べるのですが、さすがにヘタは食べずに残していました。ヘタを毎日捨てるという習慣がないのか、次第にヘタの山が机の上に積み上がり・・・ヘタの山を見た日本人は「これ、なーに?」という感じで不思議がっていました。
<インド人のプライド>
日本のIT技術者は3Kとか5Kとか言われたりしますが、インドにおけるIT技術者の社会的地位は高く、とても仕事に誇りを持っている裏返しとして、とてもプライドが高いのです。お客様は日本人ですので、いつものIT技術者のつもりでインド人技術者と会話すると、彼らはカチーンときて巻き舌でまくし立てたりします。どこかの話で「国際会議において、インド人に黙らせることと、日本人に喋らせることほど難しいことはない」(出典不明)というのを聞いたことがありますが、まさにこの状態になります。インド人を激怒させた同僚の代わりに私が詫び状を書いたことも有りました。
<上下関係の厳しさ>
「ボスには絶対言わないで!!」とインド人コンサルタントに半泣きで言われたことが何回かありました。ある時、ご尊父がお亡くなりになられたインド人にも「ボスには絶対言わないで!!」と言われました。「仕事に身が入らないだろ?」とプロジェクトを外されるのを恐れていたからです。
<99×99>
「インド人は99×99の掛け算を暗記している」という都市伝説があります。プロジェクト中締めの飲み会で「この都市伝説って本当?」って聞いてみました。その人は「うーん、昔は覚えていたけど忘れた。19×19までなら今でも覚えている」と言っていました。インドでも地方によって99×99まで覚えたり19×19までだったり、まちまちのようです。
<言語>
インドの紙幣をご覧になったことがありますか?インドには多数の言語があるため紙幣には10以上の言語でずらーっと表記されています。日本にも方言がありますが、インドでは言語ごとに文字そのものが異なるので、このような表記になるのです。なので、様々な地方出身から集まったプロジェクトのインド人達はインド人同士でも英語でないと話が通じません。同じ言語を話す人同士は、その言語で会話したりしていましたが、その言語が理解できないインド人は仲間外れのようになっていました。
<インド人のプライド2>
さて、プロジェクトも終盤になりお客様へ色々と引き継いでいると、猛烈な剣幕でインド人に怒られました。「システム開発の引き継ぎをお客様にするな!」と。インド人にしてみればシステム開発をお客様ができる訳ないし、お客様自身が開発すると我々の仕事が無くなってしまう、と。気にせずにお客様へ引き継ぎましたけど。

次回は、製造業のグローバル化についての考え方の変遷の話を書いてみようと思います。

2012年11月27日火曜日

【製造業の基幹システム #4 ○○○という名の宗教】

○○○にはアルファベット3文字が入ります。ERPでもSCMでもSOXでも色々と当てはまる文字はあるかと思います。前回も書きましたが会計・人事アプリケーションと違って、生産管理や販売管理の世界に正解はありません。脈々と受け継がれてきた管理手法や手順が時代と共に変化しながら、その時代に最適なものへと生まれ変わります。

何事も変化しようとする時には、その変化の主導権を握ろうとするために新しい言葉が生まれます。CADCAMは相当古い言葉ですが、PDMPOPMESなども既に古い言葉かと思います。ERPSCMCRMCPMEAM・・・製造業に関連する言葉だけでも相当な略語があります。これらの3文字には「教義」が存在し、教祖様(言い出しっぺ)と宣教師(業界ゴロ)が存在します。

ERP」の教祖はさておき、その宣教師たちは各々の所属する会社、団体が有利になるように教義を解釈し、宣教していました。
ERPを導入しないと不幸になる
ERPを導入するとバラ色の将来が約束される
ERPは管理会計の仕組みだ
ERPはヒト・モノ・カネを最適化する仕組みだ
ERPは人事管理の仕組みだ
ERPを使うと決算が早くなる
ERPには経営判断の為のデータが入っている
ERPを導入すると在庫が削減される
ERPを導入すると納期が短縮される
ERPを導入すると利益率が向上する
ERPによってグローバルスタンダードになる
ERPにお任せあれ~

上記のどれが真実なのかは、ここでは触れません。私を含め90年代からERPに関わっていた人間は、このような文句を垂れながら宣教にいそしんでいました。

ここで話はガラリと変わりますが、「満員電車」という古い日本映画(1957年製作)をご覧になったことはありますか?ERPに関わっている方は必見です。主人公が新卒で勤めた大会社(ビール製造会社)での仕事は、手書き伝票を元帳へ転記する仕事です。来る日も来る日も右から左へ数字を書き写しているだけです。それも大人数で机を並べて朝から晩まで転記です。まさに「人間ERP」です。
私自身がERP導入に関わったお客様で手書きの仕訳伝票からERPに移行した会社が1社だけ有ります。経理部員は各部署から回ってくる売上伝票や仕入伝票を仕訳伝票に記帳し輪ゴムで束ねて会計事務所へ送り、一月ごとに月次B/SP/L、総勘定元帳、などが会計事務所から送られてくる・・・という仕事がERP導入によって全く無くなりました。

もうひとつ似たようなエピソードを思い出しました。20年ほど前の話です。ERPではありませんが共通費の部門別配賦の仕組みをシステム化したことがありました。これは単純な計算の繰返しなので、人間がやると面倒だけれどもコンピュータ(計算機)は最も得意な分野です。システム化以前は、この道ウン十年の経理部員が算盤(そろばん)で計算していたのですが、さてシステムが完成し実データを使った最終テストで段ボール3箱分の計算過程のデータが吐き出されました。ベテラン経理課員は、全ての縦計、横計を算盤で検証した後に「計算、合ってるね・・・」と寂しそうに去っていきました。

話を元に戻すと・・・
私は、ERPは「ビジネスインフラ」だと思います。携帯電話やスマートフォン、パソコン、コピー機、ボールペン、ハサミ、作業机・・・の、様なものです。普通に身の回りに存在し、色々なメーカーの多種多様なものがあり、無くても仕事は出来るけど無いと困る様なものです。
「ウチの会社はERPなくても困ってないし」
という会社もあるかもしれません。きっとERP(のようなもの)を手組みで作っているか、業務別のパッケージを組み合わせて使っているのでしょう。もしかすると「人間ERP」かもしれません。
「ウチの家は水道引かなくても井戸掘るから困ってないし」
どうぞ掘って下さい。

次回は、インド人技術者の話を書いてみようと思います。

2012年10月24日水曜日

【製造業の基幹システム #3 開発フレームワーク】

私が製造業の基幹システムに関わるようになった1995年頃、まだ「ERP」という言葉は浸透していませんでしたが、某電機大手の生産管理システムにTrimcsLNの元となったERP)を採用することになりました。
ERPERPとして使うのではなく、パッケージが持っているMPSMRP機能をベースに機能追加、改造して工場全体の生産管理システムを構築するという構想です。
それまでは主に会計・人事系のシステム開発を中心に関わっていましたので、生産管理システムとしては初めての経験でした。そして、会計・人事系のシステムと生産管理系システムとの大きな違いを知ることになります。
<会計・人事系システム>
・目的は省力化
・法令、規制に合わせることが重要
・機能よりもコスト
・ユーザーに女子が多い
<生産管理システム>
・目的は様々
ROIを出すことが重要
・機能要件に限界が無い
・ユーザーはおっさん

私の会計・人事系システムから生産管理系システムへの経験というのは、非常に運が良かったと思います。現在の成熟した(機能満載の)ERPの全体を理解して、それに関わる業務を仕事とすることは非常にハードルが高いと思いますが、私は一歩一歩階段を上るように経験を踏むことが出来ました。

ところで、プロジェクト中の一番の思い出と言えば・・・工場の独身寮を使わせて頂いていたのですが、久しく使用していない部屋だったので夜はチューチューとネズミの運動会、と思いきやコウモリが住み着いていました。

次回は、「ERP」という言葉が浸透し出し、若造だった私が偉そうにゴタクを並べていた頃の話を書いてみようと思います。

2012年9月10日月曜日

【製造業の基幹システム #2 某外資系日本法人】

1999年頃の話です。
某外資系日本法人へのERP導入の話が来ました。それまで私は外資系の会社に身を置いていながら、ベタベタの日本企業ばかり関わっていたので、この会社へのERP導入においては私自身の転機となることが多くありました。その(転機となった)大きな要因はドイツ人コンサルタントと組んで仕事をしたことです。彼はシステム導入方法論やプロジェクト運営の専門家であったのですが、いわゆる「机上の理論」ではなく、実践的なプロジェクト運営について非常に長けた人物でした。

<<走りながら考える>>
プロジェクト開始時には、どのプロジェクトにおいてもプロジェクト日程表(WBS)を作成するかと思います。そして、大まかな計画から詳細な計画までいくつかのバージョンがあるかと思います。
私がドイツ人コンサルタントと詳細計画を策定していた時、彼はちょっとイライラした様子でした。
「日本人って、ホント細かいよね」
ん?ドイツ人も結構細かいのでは???
彼曰く、
ERPの導入において、「誰が何をどうするか」は走りながら考えるべき。
・プロジェクト期間中にギャップや課題を出し続けるのだから、将来の詳細計画は意味が無い。
・なので、プロジェクト期間中には「詳細計画策定」のタスクを必ず入れよ。
・プロジェクトメンバーの負荷を平準化することはプロジェクトの目的ではない。
とのこと。
なるほど、確かに。
毎週金曜日の夕方はプロジェクト主要メンバーで「翌週の詳細計画を立てる会」を実施するようになりました。
組織でがんじがらめになっているような大会社においては、このやり方は通じないのかもしれませんが。

<<困難な課題>>
システム実装中に、ある課題がありました。棒状の資材を切断して製品に組み込むのですが、その資材は受注時に長さが決まるので、どれだけの長さの資材をどれだけ在庫しておけば良いかわかりません。かと言って、受注してから資材を発注していたら、お客様が望む納期に間に合いません。私を含めたプロジェクトメンバーはウンウン唸りながらあーでもない、こーでもないと計算式と格闘していると、ドイツ人コンサルタントが一言、
「そんな無駄な検討をする暇があったら他のことを検討しようよ」。
プロジェクト一同、「は!?」。
彼曰く、
・すぐに答えが出ないのであれば、今まで通りのやり方でやればよいでしょう。
・その答えが大きな利益を創出しますか?検討に時間を掛けるということはコストを垂れ流していることと同じですよ。
とのこと。
なるほど、確かに。

<<日本人としての特性>>
ドイツ人コンサルタントと一緒に仕事をすることによって、「日本人であること」と痛烈に感じざるを得なかった訳ですが、「日本人であること」とは一体何でしょうか?
個人的な意見かもしれませんが、日本人の根底にあるものは
「不安」
ではないでしょうか。
・失敗に対する不安(やらない)
・変化に対する不安(変わらない)
・大っぴらになることに対する不安(隠す)
など。
不安だから、みっちりとした計画を作り、「計画通り」に進行すると安心します。
不安だから、目の前の課題を解決しないではいれません。
もちろん、日本人以外でも多かれ少なかれ不安を持って生きていますが、彼らはあっけらかんと失敗しますし、新しいことを創出することが自らの価値と思っています。

ところで、前回予告で「私が肥った原因になった」と書きました。その理由は・・・この会社へ4カ月ほど通う間に「甘~いコーヒー飲料」にハマってしまいまして、それから私の主たる飲料は「甘~いコーヒー飲料」になってしまいました。

次回は、私が製造業の基幹システムに関わるようになった頃の話を軸に書いてみようと思います。

2012年8月21日火曜日

【製造業の基幹システム #1 私の経歴について】

私は1990年代半ばより、製造業向けERPに関わる仕事をしています。その間に関わった企業は約500社です。その間に製造業(私にとってはお客様)のシステムに関する考え方の変化を感じています。
この【製造業の基幹システム】シリーズでは、その数百社の様々な立場の方からお話を聞き、そして私が感じたことを書いていく予定です。
私の専門は基幹システムですので、「製造業のシステムの話」と言ってもCADMESPOPなどの話は出てきません。主に、
・なぜコンピュータ・システム(ERP)を導入するのか?
・コンピュータ・システム(ERP)を導入する為にはどうすればよいのか?
・コンピュータ・システム(ERP)を導入するとどうなるのか?
・もし、コンピュータ・システム(ERP)を導入しないとどうなるのか?
などの観点で、思うままに書いていこうと思います。

なお、世の中にはこのような書籍が沢山存在しますので、多くの方が常識と認識しているようなことを書くつもりはありません。そのような意味では、皆様が参考になるようなことが文章中に出てくるとは限りませんし、私自身が誤解・誤認識しているようなことが有るかもしれません。また、専門用語の解説などをするつもりもありません。

数百社の製造業の中には、数百人日以上関わったお客様もいますし、残念ながら数人日程度のお付き合いのお客様もいらっしゃいます。一昔前には○○(製品、人、手法、etc.)を知っているというだけで「コンサルタント」と名乗っている方も沢山いらっしゃいましたが、情報だけであればWEBから直ぐに取り出せる時代になりました。お客様が成功、成長するための方法も多種多様になり、コンサルタントという職種を職業にすることが難しい時代になったのかもしれません。

・・・と、いうようなことを、書いていく予定です。
次回は、私が肥った原因になった某外資系日本法人の話を軸に書いてみようと思います。