1999年頃の話です。
某外資系日本法人へのERP導入の話が来ました。それまで私は外資系の会社に身を置いていながら、ベタベタの日本企業ばかり関わっていたので、この会社へのERP導入においては私自身の転機となることが多くありました。その(転機となった)大きな要因はドイツ人コンサルタントと組んで仕事をしたことです。彼はシステム導入方法論やプロジェクト運営の専門家であったのですが、いわゆる「机上の理論」ではなく、実践的なプロジェクト運営について非常に長けた人物でした。
<<走りながら考える>>
プロジェクト開始時には、どのプロジェクトにおいてもプロジェクト日程表(WBS)を作成するかと思います。そして、大まかな計画から詳細な計画までいくつかのバージョンがあるかと思います。
私がドイツ人コンサルタントと詳細計画を策定していた時、彼はちょっとイライラした様子でした。
「日本人って、ホント細かいよね」
ん?ドイツ人も結構細かいのでは???
彼曰く、
・ERPの導入において、「誰が何をどうするか」は走りながら考えるべき。
・プロジェクト期間中にギャップや課題を出し続けるのだから、将来の詳細計画は意味が無い。
・なので、プロジェクト期間中には「詳細計画策定」のタスクを必ず入れよ。
・プロジェクトメンバーの負荷を平準化することはプロジェクトの目的ではない。
とのこと。
なるほど、確かに。
毎週金曜日の夕方はプロジェクト主要メンバーで「翌週の詳細計画を立てる会」を実施するようになりました。
組織でがんじがらめになっているような大会社においては、このやり方は通じないのかもしれませんが。
<<困難な課題>>
システム実装中に、ある課題がありました。棒状の資材を切断して製品に組み込むのですが、その資材は受注時に長さが決まるので、どれだけの長さの資材をどれだけ在庫しておけば良いかわかりません。かと言って、受注してから資材を発注していたら、お客様が望む納期に間に合いません。私を含めたプロジェクトメンバーはウンウン唸りながらあーでもない、こーでもないと計算式と格闘していると、ドイツ人コンサルタントが一言、
「そんな無駄な検討をする暇があったら他のことを検討しようよ」。
プロジェクト一同、「は!?」。
彼曰く、
・すぐに答えが出ないのであれば、今まで通りのやり方でやればよいでしょう。
・その答えが大きな利益を創出しますか?検討に時間を掛けるということはコストを垂れ流していることと同じですよ。
とのこと。
なるほど、確かに。
<<日本人としての特性>>
ドイツ人コンサルタントと一緒に仕事をすることによって、「日本人であること」と痛烈に感じざるを得なかった訳ですが、「日本人であること」とは一体何でしょうか?
個人的な意見かもしれませんが、日本人の根底にあるものは
「不安」
ではないでしょうか。
・失敗に対する不安(やらない)
・変化に対する不安(変わらない)
・大っぴらになることに対する不安(隠す)
など。
不安だから、みっちりとした計画を作り、「計画通り」に進行すると安心します。
不安だから、目の前の課題を解決しないではいれません。
もちろん、日本人以外でも多かれ少なかれ不安を持って生きていますが、彼らはあっけらかんと失敗しますし、新しいことを創出することが自らの価値と思っています。
ところで、前回予告で「私が肥った原因になった」と書きました。その理由は・・・この会社へ4カ月ほど通う間に「甘~いコーヒー飲料」にハマってしまいまして、それから私の主たる飲料は「甘~いコーヒー飲料」になってしまいました。
次回は、私が製造業の基幹システムに関わるようになった頃の話を軸に書いてみようと思います。