今回は、LN(Baan)の代表的な事例をご紹介したいと思います。
<<ボーイング>>
「製造業のERPと言えばLN」となった、Baan社が飛躍する元になった事例です。
LNは、1994年から標準機能だけでボーイングが使えるERPをひたすら追い続けていました。
ボーイング社がERP導入を検討した背景には下記のようなことがあります。
・元々は軍用機向けのシステムで民間機の工場を管理していたのでビジネスプロセスが合わない
・競合(エアバス)の出現により、早く安く製品を市場に出すことが必要
・「基幹システム」と呼ばれるものが400以上も混在し、業務改革できない
LN(当時はTRITON)が選択された理由は下記のようなものです。
・柔軟性
・オープン性
・バーン社のコミット(ボーイング社の機能要件を標準機能に取り込む)
実は、LNの前身であるBaan5には「ボーイング社専用バージョン」が有りました。
そして、LN(Baan6)がリリースされた時は(市販バージョンではなく)「(機能盛りだくさんの)ボーイング社専用バージョン」が元になっています。
・・・実はボーイング最新型の787工場のERPは、すんなりLNに決まった訳ではありません。他の型式(737、747、757、767、777)の工場は全てBaanが稼働していましたが、改めてERP選定が実施されました。そして、LNが選択されました。
<<フェラーリ>>
フェラーリの様々な資料は殆ど英語ではないので、私の誤解があるかもしれませんが・・・
フェラーリは1999年から2002年にかけて業務改革を行いました。
それ以前からLN(当時はBaan)が使われていましたが、この時にBaanの特性をもっと生かそうということになりました。まず取り組んだのが全ての部品の計画方法の定義です。完成車の生産工程を20日と定義し、20日にするには各部品をどのように計画すべきか(見込在庫?受注してから調達?他)をBaanのマスターに定義しました。後はBaanに任せて・・・
実はこのやり方はボーイングの取り組みとそっくりです。もしかしたらボーイングのやり方を真似たのかもしれません。
それからフェラーリ社は近代化することに成功し、とうとうF1マシンにインフォアのロゴが貼られるようにもなりました。
また、インフォア社が2011年発表した製品、「ION」の先行事例でもあります。
<<コマツ>>
日本企業で最大級(拠点、ユーザー数)のLN導入事例です。生産系ERP事例としてはERP業界でも最大級かもしれません。
コマツがBaanに決めた時(1997年)、現会長の坂根さんが社長、現社長の野路さんがCIOでした。
最初にドイツの拠点から導入をはじめ、海外主要拠点、そして国内拠点、国内関連会社へと次々と展開していきました。
実際のERP導入に関しては多くの現インフォア社社員やパートナー、関係者と、こちらも日本最大級の方々が関わっています。
<<東京エレクトロン>>
日本企業のユーザとしてはコマツよりも古い事例です。
最初は海外拠点への導入だったのですが、当時(1994年)はバーン社日本法人が無く、複数の国内代理店が導入に参画していました。
当初海外の一部拠点から始まったLN導入も、現在では世界数十拠点(日本含む)で使われています。日本の工場での導入においては他社のSCM製品との連携がミソでした。現在のインフォア社日本法人が入居しているビルの1フロア下には東京エレクトロンの関連会社が入居しています。これも何かの縁かもしれません。
<<TDKラムダ(当初導入時の社名は「デンセイ・ラムダ」)>>
今回取り上げた中で、私が唯一導入プロジェクトに直接関わった事例です。
ERP導入のきっかけは、TDKラムダの母体となった「ネミック・ラムダ」と「日本電気精器」という2つの会社の合併です。
2001年秋より導入プロジェクトが始まりました。プロジェクト体制は日本人数人とインド人との混成チームです。プロジェクトルームはとてもスパイシーでした。キーボードの横に生のニンジンを積上げ、ポリポリ食べているインド人もいました(しかも女性)。
2003年、日本の全拠点を稼働後に海外拠点も順次稼働しました。
プロジェクト期間中には色々とスパイシーな話もありますが・・・ここには書けません。
導入当時のCIO熊澤さんは「日本の情報システムリーダー50人 ビジネス戦略とIT活用の実例(ソフトバンク クリエイティブ刊)」で最初に紹介されています。
次回は【LNよもやま話 #5 世界中のバーン・マニア(仮題)】をお伝えしたいと思います。
私などが足元にも及ばない変人が沢山いるようです。