2012年8月21日火曜日

【製造業の基幹システム #1 私の経歴について】

私は1990年代半ばより、製造業向けERPに関わる仕事をしています。その間に関わった企業は約500社です。その間に製造業(私にとってはお客様)のシステムに関する考え方の変化を感じています。
この【製造業の基幹システム】シリーズでは、その数百社の様々な立場の方からお話を聞き、そして私が感じたことを書いていく予定です。
私の専門は基幹システムですので、「製造業のシステムの話」と言ってもCADMESPOPなどの話は出てきません。主に、
・なぜコンピュータ・システム(ERP)を導入するのか?
・コンピュータ・システム(ERP)を導入する為にはどうすればよいのか?
・コンピュータ・システム(ERP)を導入するとどうなるのか?
・もし、コンピュータ・システム(ERP)を導入しないとどうなるのか?
などの観点で、思うままに書いていこうと思います。

なお、世の中にはこのような書籍が沢山存在しますので、多くの方が常識と認識しているようなことを書くつもりはありません。そのような意味では、皆様が参考になるようなことが文章中に出てくるとは限りませんし、私自身が誤解・誤認識しているようなことが有るかもしれません。また、専門用語の解説などをするつもりもありません。

数百社の製造業の中には、数百人日以上関わったお客様もいますし、残念ながら数人日程度のお付き合いのお客様もいらっしゃいます。一昔前には○○(製品、人、手法、etc.)を知っているというだけで「コンサルタント」と名乗っている方も沢山いらっしゃいましたが、情報だけであればWEBから直ぐに取り出せる時代になりました。お客様が成功、成長するための方法も多種多様になり、コンサルタントという職種を職業にすることが難しい時代になったのかもしれません。

・・・と、いうようなことを、書いていく予定です。
次回は、私が肥った原因になった某外資系日本法人の話を軸に書いてみようと思います。

2012年8月10日金曜日

【LNよもやま話 #4 代表的な導入事例】

今回は、LNBaan)の代表的な事例をご紹介したいと思います。

<<ボーイング>>
「製造業のERPと言えばLN」となった、Baan社が飛躍する元になった事例です。
LNは、1994年から標準機能だけでボーイングが使えるERPをひたすら追い続けていました。
ボーイング社がERP導入を検討した背景には下記のようなことがあります。
・元々は軍用機向けのシステムで民間機の工場を管理していたのでビジネスプロセスが合わない
・競合(エアバス)の出現により、早く安く製品を市場に出すことが必要
・「基幹システム」と呼ばれるものが400以上も混在し、業務改革できない
LN(当時はTRITON)が選択された理由は下記のようなものです。
・柔軟性
・オープン性
・バーン社のコミット(ボーイング社の機能要件を標準機能に取り込む)
実は、LNの前身であるBaan5には「ボーイング社専用バージョン」が有りました。
そして、LNBaan6)がリリースされた時は(市販バージョンではなく)「(機能盛りだくさんの)ボーイング社専用バージョン」が元になっています。
・・・実はボーイング最新型の787工場のERPは、すんなりLNに決まった訳ではありません。他の型式(737747757767777)の工場は全てBaanが稼働していましたが、改めてERP選定が実施されました。そして、LNが選択されました。

<<フェラーリ>>
フェラーリの様々な資料は殆ど英語ではないので、私の誤解があるかもしれませんが・・・
フェラーリは1999年から2002年にかけて業務改革を行いました。
それ以前からLN(当時はBaan)が使われていましたが、この時にBaanの特性をもっと生かそうということになりました。まず取り組んだのが全ての部品の計画方法の定義です。完成車の生産工程を20日と定義し、20日にするには各部品をどのように計画すべきか(見込在庫?受注してから調達?他)をBaanのマスターに定義しました。後はBaanに任せて・・・
実はこのやり方はボーイングの取り組みとそっくりです。もしかしたらボーイングのやり方を真似たのかもしれません。
それからフェラーリ社は近代化することに成功し、とうとうF1マシンにインフォアのロゴが貼られるようにもなりました。
また、インフォア社が2011年発表した製品、「ION」の先行事例でもあります。

<<コマツ>>
日本企業で最大級(拠点、ユーザー数)のLN導入事例です。生産系ERP事例としてはERP業界でも最大級かもしれません。
コマツがBaanに決めた時(1997年)、現会長の坂根さんが社長、現社長の野路さんがCIOでした。
最初にドイツの拠点から導入をはじめ、海外主要拠点、そして国内拠点、国内関連会社へと次々と展開していきました。
実際のERP導入に関しては多くの現インフォア社社員やパートナー、関係者と、こちらも日本最大級の方々が関わっています。

<<東京エレクトロン>>
日本企業のユーザとしてはコマツよりも古い事例です。
最初は海外拠点への導入だったのですが、当時(1994年)はバーン社日本法人が無く、複数の国内代理店が導入に参画していました。
当初海外の一部拠点から始まったLN導入も、現在では世界数十拠点(日本含む)で使われています。日本の工場での導入においては他社のSCM製品との連携がミソでした。現在のインフォア社日本法人が入居しているビルの1フロア下には東京エレクトロンの関連会社が入居しています。これも何かの縁かもしれません。

<<TDKラムダ(当初導入時の社名は「デンセイ・ラムダ」)>>
今回取り上げた中で、私が唯一導入プロジェクトに直接関わった事例です。
ERP導入のきっかけは、TDKラムダの母体となった「ネミック・ラムダ」と「日本電気精器」という2つの会社の合併です。
2001年秋より導入プロジェクトが始まりました。プロジェクト体制は日本人数人とインド人との混成チームです。プロジェクトルームはとてもスパイシーでした。キーボードの横に生のニンジンを積上げ、ポリポリ食べているインド人もいました(しかも女性)。
2003年、日本の全拠点を稼働後に海外拠点も順次稼働しました。
プロジェクト期間中には色々とスパイシーな話もありますが・・・ここには書けません。
導入当時のCIO熊澤さんは「日本の情報システムリーダー50人 ビジネス戦略とIT活用の実例(ソフトバンク クリエイティブ刊)」で最初に紹介されています。

次回は【LNよもやま話 #5 世界中のバーン・マニア(仮題)】をお伝えしたいと思います。
私などが足元にも及ばない変人が沢山いるようです。

2012年8月6日月曜日

【LNよもやま話 #3 Baanが関連する書籍】

前回の予告通り、Baanが関連する書籍についていくつかご紹介します。
<<チェンジ・ザ・ルール!>>

エリヤフ・ゴールドラット 著 三本木 訳 (ダイヤモンド社刊)

序文「旧友のソフトウェア開発メーカー、バーン社を経営しているポール・バーン氏から連絡があり・・・」
と、いきなりバーン社が登場します。
本文は、架空のERPベンダーを主体に話が進みます。
「マギー、中小企業を相手にするには、利益が増えることをちゃんと示すことができないといけないと言ったじゃないか。つまり、バリューだよ。それをどう提供すべきか、その方法がやっとわかったんだよ」

・・・結論は​本書にて。


<<世界一の製造力から世界一の経営力へ>>

バーン ジャパン 他共著 (リックテレコム刊)

Baan5がリリースされた時に刊行されたBaanのコンセプトや機能の解説書です。10年以上前に刊行された本ですがLNのコンセプトを理解する為の入門書として十分使えるかと思います。

<<日本製造業、逆転のストーリー 企業再生―グローバル・オンリーワンに一気に迫る業務変革とERP>>

本荘 修二 監修  バーンジャパン 編集 (ダイヤモンド社刊)

ゴールドラット風にERPの導入を小説仕立てにしたものです。日本でのBaan導入事例をベースに書かれているのでゴールドラット本より読みやすいかもしれません。

【洋書】

<<The Way To Market Leadership, My Life As An Entrepreneur>>

Jan Baan

バーン社創始者Jan Baan(ヤン・バーン)による自伝です。自分年表もあります。
表題は英語版のものですが、オランダ語版、ドイツ語版などもあるようです。

【映画】

<<「De uitverkorene」(2006年オランダでのTV映画)>>

主人公は「Laan」兄弟です。JohanPeterというLaan兄弟が共同経営しているソフトウェア会社における、兄弟の苦悶を描いた映画です。残念ながら私自身は見ていませんが、各種​映画レビューを見ると映像がとても美しい映画のようです。一応フィクション映画ということになっていますが、Baan兄弟およびBaan社のドキュメンタリーのような映画です。
どなたか日本語字幕を付けてくれると有り難いです。

次回は、【LNよもやま話 #4 導入事例(仮題)】をお伝えしたいと思います。