2014年12月25日木曜日

【LNよもやま話 #16 個別受注生産製造業】

久しぶりにInfor LNに関する話を書きたいと思います。

さて様々な業種、業界、業態の業務システムで一番導入難易度が高いシステムは何でしょう?

天気予報システム?しかしながらInfor LNには天気予報機能はありません。Infor LNが市場としているのは「組立製造業」です。部品や原材料を組立、加工して製品をつくる製造業です。

さて、「組立製造業」といっても様々な業種、業界、業態がありますが、単純に下記の4つに分類してみます。

・見込生産型(市場の需要を予測して、標準製品を生産する)

・受注生産型(注文を請けて、標準製品を生産する)

・受注組立型(注文時に標準オプションを選択させ、顧客仕様製品を生産する)

・個別受注生産型(個々の注文毎に新規設計し、顧客仕様製品を生産する)

ひとつの製品でも、製品を構成するユニット、コンポーネントは見込生産している標準品かもしれません。また、受注組立型で選択するオプション仕様は全て標準品で構成されると考えます。

例えば、東京都庁の建物は個別受注生産ですが、ほとんどの建売住宅は見込生産型、ハウスメーカーによる多くの注文住宅は個別受注生産のように見えて実は受注組立型です。

 

もちろん、これら4分類の中で一番ヤヤコシイ仕組みは「個別受注生産型」の製造業ということが出来ます。

納期とコストを最も小さくして市場競争力を高めるためには、出来るだけ標準化、共通化し、出来るだけ受注組立型に近付けることが必要ですが、様々な理由によってどうしても個別設計が必要な場合があります。

なので、

・営業部門と設計部門のシームレスな連携(見積仕様)

・営業部門と調達部門のシームレスな連携(先行調達)

・設計部門と生産部門のシームレスな連携(製品仕様)

・設計部門とサービス部門のシームレスな連携(品質情報)

・案件単位に様々な原価を管理する仕組み

などの部門をまたがった業務連携が非常に重要です。

おや、ここで気付きましたね?まさにERPの真骨頂です。

どんなに大量の製品を製造していても、単純な製品を見込生産する仕組みは単純なシステムで実現出来ますが、個別受注生産製造業のシステムは上記4分類全ての製造業が必要とする業務管理機能をシームレスに連携するシステムが必要です。

Infor LNが航空防衛業界や産業機械製造業などに広く普及しているのは、このような理由によります。

単純な「生産管理ソフト」を導入しただけでは、個別受注生産型の製造業の効率化には程遠いことを分かって頂けたでしょうか?

2014年11月28日金曜日

【製造業の基幹システム #14 ERP導入体制】

今回は「ERPの導入体制」について書きますが、ぼやっとした話になるかもしれません。なぜならば「これが正解」という導入体制は無いからです。とは言っても製造業向けERPを導入するために必要なタスクは概ね決まっていますから、主に異なるのは自社リソースと外部リソースの役割および責任分担です。

例えばインフォア社にはOPIMOne Point Implementation Methodology)という導入方法論があります。これにはERPの導入において必要なタスクを漏れなく定義されていますが、これさえあれば、全てのERP導入プロジェクト計画が出来上がりという訳ではありません。

ERP導入プロジェクト体制を立案するに当たり、

・文化

・予算

・歴史

などを考慮する必要があります。よって、全く同じスコープで同じ導入規模であっても導入に関わる外部費用は大きく異なる可能性があります。

例えば、企業文化(体質)は最も大きく導入体制や、費用に関係する事項かもしれません。ERP導入に最も適さないのは「縦割りで丸投げ」文化です。事業の全体像を分かっていて(部分最適では無く)全体最適を目指して「有るべき姿」を描くとこができ、意思決定し、実行することが出来る人は誰もいないかもしれません。このようなERP導入の根幹に関わるような事項を外部のコンサルタントに委託することも可能ですが、このようなコンサルタントは非常に高価です。しかしながら、ここでケチると必ずERP導入は失敗します。自社の文化は「風通しがよく、部門間の隔たりがなく、自由に意見を言える環境で、親分肌のマネジメント層も沢山いる」という企業は、外部コンサルタントはアドバイザー的な役割でよいかと思います。

そうは言っても、予算には限界が有りますから、「お絵描き」や「資料作り」をばかりをやっている優秀(で高価)な外部コンサルタントを沢山雇っても、いつまでもERPは稼働しません。「有るべき姿」に対して、ERPをシミュレーションして、実際にERP上で業務が運用できるかどうかを検証する必要があります。もしも自社でそのような「手足」としてのリソースが不足するようであれば、これも外部から調達する必要があります。

また、企業の歴史もERP導入体制に影響を与える要素のひとつです。「大きく変化し続けた歴史が我が社の歴史」という企業はERP導入が最も容易な企業かもしれません。変化を経験し、その変化にどのように対応したかというノウハウはERP導入に際して貴重な経験です。もし自社内にそのような人材がいるのであれば、プロジェクトに是非とも参画させるべきです。もし、自社の歴史において大きな変化もなく、そのような経験をした人材もいないのであれば、「企業が変化する時に何が起きるか?」を分かっているコンサルタントを参画させるべきでしょう。

もちろん、「ERPとは何か?」を分かっている人材、導入するERPの詳細を理解し、説明出来る人材も必要です。一般的には、ERP導入プロジェクト初期段階で自社プロジェクト中心メンバーがERP機能のトレーニングを受講しますが、数週間から数カ月でERPの隅々まで理解できる程ERPは甘くありません。そこで、ERPを熟知したアプリケーションコンサルタントを外部に委託することになります。

さて、ここまで述べたことをまとめると

1.将来像を描き、変化を予測することが出来る「頭脳」

2.黙々とシステムを検証する「体力」

3.ERPの機能を知り尽くした「知識」

の3つにおいて、自社リソースに不足している分を外部から補うことでERP導入体制が完成します。

もちろん、自社業務を理解している人材をプロジェクトに参画させることは必須です。この人材は外部から調達することはできません。

え?自社業務を理解している人が居ない?

ERP導入は、もう少し後にした方が良いかもしれません。

2014年10月29日水曜日

【製造業の基幹システム #13 ERPの選定について】

前回は「次回は楽しい話が書けたらいいな」と終わったにも関わらず、余り楽しくない話になりそうです。

さて、いきなりですが

ERP導入を検討している製造業のほとんどはERPを選定する能力がない」

と思います。

頭に「日本企業の」と付けてもいいかもしれません。

多くのERP導入を検討している企業は次のようなステップで選定を進めるかと思います。

1.課題の認識

2.情報収集、調査

3.新システムの目標、目的の明確化

4.新システム構想策定

5.各社へ提案、見積依頼

6.提案、見積結果の評価

7.最終選定・契約

これらのステップのいくつか、もしくは全てに外部の人間を参画させていますか?もしくは自社の選定プロジェクトメンバーに他社でのERP選定・導入経験がある人物は含まれていますか?

財務会計や人事給与システムであれば、「なんとなく使い易そう」「プロマネやる予定の人はいい人そうだ」「初期費用が一番安価だ」という選定方法でよいのかもしれませんが、生産管理を中心とした製造業の基幹システムをそのような基準で選定していいものでしょうか?

綿密に自社の仕組みや候補としたERPの仕組みを調査・検討・評価しているから大丈夫という訳ではありません。逆に、自社の文化や業務、既存のシステムを知り尽くした人ほど、自社ERPの選定においてはネックになる場合もあります。

なぜならば、ERPの選定、導入には必ず取捨選択が必要だからです。「この機能は絶対に必要」「この画面では業務は回らない」・・・本当にそうでしょうか?かつて良く言われた「ERPはベストプラクティス」という言葉は好きではありませんが、自社で思い描いた新システム像を押し通すことによる様々なリスクやデメリットがあることを忘れてはなりません。

もちろん、選定を外部へ丸投げすることも避けるべきです。培ってきた自社の文化や強みを新システムに吹き込むには必ず自社のメンバーが責任ある立場で選定することが必要です。

『提案プレゼンテーションが上手な会社が必ずしもERP導入が上手とは限らない』

ということを十分に認識する必要があります。

これらのことを踏まえたERPの評価・選定は、ERPの選定・導入を経験した人ではないと不可能です。はっきり言います。不可能です。

冒頭に書いた

ERP導入を検討している製造業のほとんどはERPを選定する能力がない」

とは、そのような人がERPの評価・選定に参画していない場合のことを言っています。

そして、そのような場面に良く遭遇するということです。
 

2014年9月30日火曜日

【製造業の基幹システム #12 製造業向けERP業界】


私は約20年間「製造業向けERP業界」で仕事をしていますが、この業界内部のことも少しお話ししたいと思います。もしかすると、この業界に興味がある学生の皆さん、この業界へ転職しようとしている社会人の皆さんに少しばかりお役に立つかもしれません。


20年以上前、私は「総合商社オンラインシステム」や「公益法人会計システム」など製造業とは関係ない業界に関わっていたという話は以前に書きましたが、これらの業界と「製造業」に関わる人たちは文化も考え方も全く異なります。

バブル時代の商社は裏方であるシステム関連の人たちも皆さんが想像されるような「バブル」のイメージでした。女性は前髪が「竹輪」、男性のスーツと言えば「ソフトスーツ」です。公益法人の方は経理部の方が「算盤」で計算しているという時代でした。

同様に、製造業には製造業のノリ(文化)があります。製造業に関わる方々と一緒に仕事をするためには「製造業のノリ」を理解し、そのノリに乗ることが重要です。


昔は生産管理システムに関わる人は「生産管理ヲタク」が多かったのですが、「ヲタク」と言っても強面のおっちゃんです。いいモノを早く、安く作るために日夜考えて検証、実践しながら業務とシステムの仕組みを作ってきたおっちゃんです。このようなおっちゃんに「欧米系生産管理パッケージソフトウェア」を採用して頂くことは至難の業でした。

まず、言葉が通じるようになるまでが大変です。メーカー毎に方言があり、「製番」「工番」「作番」などはその一例です。部品表の呼び方も「BOM」「BM」「PS」と様々です。歴史のある会社では数十年、もしかすると百年以上使ってきた言葉を簡単に変えることはできません。そのようなおっちゃんに「ERPはベストプラクティスで・・・」というようなセールストークをしてもコテンパンにやられてお終いです。

今では、そのようなこだわりの固まりのようなおっちゃんも随分減って「使えるものは何でも使う」というおっちゃんが増えてきましたが、他国、他業種と比較すると日本の製造業はプライドが高く、頑なで「うちの会社は特別だから」と言って欧米型生産管理パッケージを採用するハードルはまだまだ高いと思います。

そのような高いハードルを越えることを楽しみに感じる方はこの「製造業向けERP業界」に向いていると思いますが、そうではない方はかなり辛いかと思います。一言で表すなら「知的好奇心」です。私は数多くの製造業向けERPの営業職や技術職の方と接してきましたが、どちらの職種においても「知的好奇心」が少ない方はあっと言う間に潰れてしまいます。

もうひとつ、この業界に従事する人に必要なのは「柔軟な頑固者」という資質です。財務会計システムなどの「答えがあるシステム」と違って生産管理システムは「答えがないシステム」です。お客様の課題解決やシステム要件を柔軟にかつ確たる軸を持ち、大胆にかつ繊細に実現するには「柔軟な頑固者」である必要があります。お客様と表面上仲良くするだけで立派なシステムが実現するようであれば誰も苦労しません。お客様と真剣な喧嘩が出来る位の根性が無いと製造業向けERPの営業職も技術職も務まりません。


ちょっと辛辣な話になりましたね。次回は楽しい話を書けたらいいなと思っています。

2014年8月13日水曜日

【製造業の基幹システム #11 機能が豊富なERP】

申し訳ございません。久しぶりの投稿です。

恐らく、Infor LNは製造業向けの機能が世界一充実しているERPです。Infor LNを乗用車に例えると、「フルオプションの大型高級車」です。走る・止まる・曲がるという基本機能はもちろんですが、前後左右独立のオートエアコン、最高級オーディオ、シートヒーター/クーラー付電動調整シート、様々な走路を想定したセッティング切り替え機能なども装備されています。近所の買い物に乗る程度であれば過剰装備かもしれません。ところが、時と場合により近所の買い物も長距離の高速道路も、たまには砂漠も走行することがあるのであれば、どのようなところも快適に走行可能なクルマが必要になります。「泥道でスタックしたらクルマを捨てて歩くか、泥まみれになってクルマを持ち上げるから大丈夫」というのであれば、無改造のファミリー・カーでラリーに参戦してもよいかもしれません。

私は、様々な製造業のお客様からERP選定の相談を頂いた際にあえてInfor LNをお薦めしない場合があります。「近所の買い物にしか使わない」車を探している人に最初から大型高級車を薦めしないのと同じことです。

要は、企業の大小に関わらず「Infor LN向き」の会社と、そうではない会社があるということです。

単純な製品を繰返し生産し、製品需要も部品供給も安定し、仕入先も販売先も国内のみ・・・という企業は「Infor LN向き」ではありません。装備過剰な大型高級車で近所のスーパーマーケットに買い物に行っているようなものです。駐車場に停めるだけでも大変です。このような企業には例えばInfor SyteLineのようなERPをお勧めします。見栄を張りたいというなら話は別ですが。

製品の部品点数が飛行機並みに多い、製品需要と部品供給のバランスをとりながら製品納期を短縮するのが難しい、仕入先や販売先、自社製造拠点や販売・サービス拠点は世界中に拡がり業務の見える化や整流化を行うのが大変・・・という企業は「Infor LN向き」の企業です。

IT投資額は売上の○%が適正」という都市伝説がありますが、これはITを「省力化の道具」としてのみ捉えた場合の話です。いくら省力化しても抜本的な組織の見直しや業務プロセスの改革を行わない限りは○%の収益改善が限界だからです。

IT投資を「利益を生む投資」として捉える場合は、「売上の○%」という公式は当てはまりません。IT投資によって産み出される金額は、各々の企業の改革内容によって異なるからです。例えばInfor LNを導入したA社は、製品の生産工場移管期間を1年から2-3カ月に短縮しました。これは直接的に利益を創出する効果ではありませんが、経営判断を迅速に実現するインフラを整備したことになります。またB社はInfor LN導入前には(全部繋げると)75mあった業務フローが、導入後には25mに短縮されました。50mにおよぶ業務プロセスを無くすこと(例えば外注先への「有償支給」を止めて全て「無償支給」に変更)により、「部品在庫、製造リードタイムの30%減」という効果としてあらわれました。

これらの効果はERPを単なる便利ツールとして使うのではなく、ERPを活用した企業改革により産み出されたものであり、売上の○%と表すことが出来ない効果です。

ちょっと脱線してしまいましたね。

要するに、Infor LNはこれらA社、B社のようにチャレンジを続ける製造業にこそ向いているERPであり、その豊富な機能が生きるということです。

貴社もInfor LNに乗って、グローバルの荒波を超え世界トップクラスの製造業になってみませんか?

2014年5月30日金曜日

【LNよもやま話 #15 見た目と操作性】

現在は「Infor LN」と呼ばれているERPですが、このERP20年以上前に誕生してから数度の名称変更を経て現在に至っています。その間に業務機能的な機能拡張と合わせ、技術的な進歩も続けています。

そこで、今回は「見た目と操作性」に絞って、その変遷を振り返ってみたいと思います。

1.Triton(~1990年代半ば。日本国内ではTRIMCS

基本的にはUNIXサーバー上で動作していたので、VT端末もしくは端末エミュレータを介して操作。当然キャラクターベースのユーザーインタフェース(CUI)。グラフ表示は「*」の数で表現していました。メニューには数字が並び「1. マスタ 2. 販売物流 3. 製造」という感じです。操作性も汎用機のそれと近く、汎用機から移行しても違和感は少なかったかと思います。

2.BaanIV1990年代半ば~2000年頃)

Windows95の出現により、企業のコンピュータ端末として急速にWindowsPCが普及しました。BaanIVには「BWBaan Windows)」というクライアントソフトウェアが付属し、BWを介してERPを操作していました。出現当時、他のERPは、前述のCUIベースの操作画面が多かったなかで、「グレーのウィンドウ上でアイコンをクリック、グラフやチャートも表示」というグラフィカルベースのユーザインタフェース(GUI)は画期的でした。マウスに馴染んでいないご年配の方は、マウス操作に四苦八苦していましたが、学生時代からPCに慣れ親しんでいる世代には当然の操作性でした。

なお、そのような「マウス嫌い」の方向けにCUI(「BABaan ASCII)」インタフェース)でも操作できるようになっていました。

3.Baan51990年代後半~2000年代半ば)

「一人に一台のPC」という時代に突入し、マウス嫌いを公言するような人も少なくなり、前述のBWBaan Windows)でのGUI操作が基本になりました。ショートカットキーをWindowsOSと統一し、ERP上のデータを「Ctrl+c」でコピーし、Excelに「Ctrl+v」で貼りつけるような操作も可能になりました。

また、インターネット(Webブラウザ)の普及により、Baan5にもWebブラウザベースのユーザインタフェース(「BIBaan Internet)」)が出現しましたが、当時の技術レベル(ハード、ネットワーク)では、とてもレスポンスが悪く、本番運用で使用された例は少なかったかと思います。

4.LN2000年代半ば~)

インターネット(Webブラウザ)技術の発展にともない、LNのユーザインタフェースもjavaをベースにしたWeb UIWebTop)になりました。適切なWebサーバーを使用し、適切なチューニングをしていれば、C/S方式とのレスポンスの差はほとんどなくなりました。

また、先ごろ(javaではなく)HTML5をベースにした、新しいデザインのWeb UI(「LN UI」と言います)も発表されました。これによりクライアントPCへのjavaのインストールを不要とし、各種ブラウザ、OS、デバイスへの幅広い適用が可能になりました。


Infor LNは、「製造業の基幹業務システム」という地味なシステムですが、その時々のテクノロジーを取り入れて「いかにユーザーフレンドリーに操作性を向上できるか?」という視点でも成長を続けています。

2014年4月25日金曜日

【製造業の基幹システム #10 ERPの生まれと育ち】

昨今では全く新しいERPブランドが出てくることはほとんどなくなり、かつてのERPが淘汰され生き残ったものが、各々進化しているような状況です。さて、一言で「ERP」と言っても(「ERP」と名乗っていても)各ERP製品のコンセプトや目指しているものは様々です。

私は、各企業がERPを選択する時に一番注目しなくてはならないのは「ERPの生まれと育ち」だと思います。ERPのような業務横断型の統合パッケージは、ある日突然誕生したのではなく、元になるアプリケーションソフトウェアがあり、そこから拡張してERPを名乗っているものがほとんどです。これが「生まれ」です。また、各ERPは初期~中期の利用企業による各ERPへ機能追加要求があり、機能拡張を繰り返してきました。これが「育ち」です。

例えば、Infor LNは、組立製造業向け生産管理システム(BMCS)から生まれたERPですが、他のERPには会計システムから生まれたERPだったり、プロセス製造業向け生産管理システムから生まれたERPだったりするものもあります。

また、生まれた「地域」にも注目する必要があります。世界中で使われている多くのERPは欧州生まれです。元来欧州では多国籍企業が多く、異なる文化や習慣、法令や規制と接しながら事業を行ってきました。このような企業文化の中で生まれたシステムは、生まれた時からDNAとしてのグローバル機能を持っています。また、欧州各国は近年において多くの「変化」を経験してきました。通貨統合はもちろん、国の存在そのものが変化した国や地域も数多くあります。このような変化に対応するシステムでなければ欧州では生き残れません。

私自身はオランダ(Infor LNの生誕地)の会社、イギリスの会社、米国の複数の会社に所属してきましたが、欧州と米国の企業文化は全く異なりますし、DNAレベルでのシステムの思想が異なります。

さて、ERPとして生まれたシステムは、各ERPベンダーの企業戦略によって成長するのですが、育ち方によっては良くも悪くもなっていきます。かつて私が関係した米国系ERPベンダーは昨年日本法人が無くなりましたが、これも企業戦略のひとつです。Infor LNもかつては様々な業種業態へ対応するような戦略(例えば、BaanIVにはプロセス製造業向けモジュールがありました)をとった時期もありましたが、インフォア社に買収された以降は「組立製造業向けERP」としてターゲットを絞っています。これも企業戦略のひとつです。また、新バージョンに追加される機能は、多かれ少なかれ既存ユーザーの要求仕様が反映されます。組立製造業をターゲットにしたInfor LNは、組立製造業が必要とする機能をこれでもか、という位に詰め込んできました。あえて対象業種を絞り込むことにより、その業種が必要とする機能をバージョンアップ毎に反映しながらも複雑性を抑えることに成功しています。このような「お客様に育てられる」という側面も忘れてはなりません。

このような「生まれと育ち」に注目すれば、おのずとERPの選択肢は数少なくなり、無駄なERP検討やERP選定の時間を節約することができるのではないでしょうか?

2014年3月20日木曜日

【LNよもやま話 #14 結局○○○と何が違うの?】


今までInfor LNが最も多く競合になるのは大手グローバルERPです。LNにお声がかかるような「生産管理機能を含む組立製造業のERP案件」の場合、どちらのERPRFPに記述されているような業務要件については、ほとんどの機能を持っているので992v.s. 989点の闘いのような感じです。で、結局LNと○○○って何が違うのよ?LNって○○○をコピーして作ったERPなの(笑)?と聞かれることもあります。

そこで、Infor LNと○○○の違いについての問答を書いてみました。
【注1:「○○○」は特定のERPを指すものではありません。】
【注2:私は○○○について詳しい訳ではないので嘘八百かもしれません!!!】

 

1.一言で違いを説明して欲しい

Infor LNは製造業向けERPで、○○○は業種を問わないERPです。」

 

2.業務的な側面で違いを説明して欲しい

「○○○は、生産管理機能がついた会計管理システムです。Infor LNは会計管理機能がついた生産管理システムです」

 

3.○○○も多くの製造業で使われているよね?

Infor LNが導入されている製造業の100%は生産管理機能を使用していますが、○○○が導入されている製造業の半分も生産管理機能を使用していません」

 

4.費用的な側面で違いを説明して欲しい

「初期費用は変わりません。ただし、運用維持費用は圧倒的に安価ですので長期間使えば使うほどお得です。」

 

5.すでに○○○を会計や購買業務で使っているんだけど

「では、Infor LNを○○○に連携しましょう。○○○を他の会計システムに連携することはあり得ませんが、Infor LNは他のシステムとの連携は自由自在です。」

 

6.○○○が大企業に入っている事例は良くきくけど、Infor LNは聞かないよね?

「ボーイング社など部品点数が多くてグローバルサプライチェーンが複雑な製造業は○○○ではなくInfor LNを選択しています」

2014年2月5日水曜日

【製造業の基幹システム #9 ERPを「ERP」として使う】

大企業、中堅企業には「ERP」が普及してきましたが、ERPを導入済の会社の中でERPを「ERP」として使っている会社はどれ位あるのでしょうか?

改めて言うことではないのかもしれませんが、ERPとは「Enterprise Resource Planning」です 。直訳すると「企業資源計画」とでもなるのでしょうか?私は、それぞれの単語の中に「ERP」の本質があるかと思っています。

Enterprise

CompanyではなくEnterpriseと称しているところがERPの本質を表しています。海外拠点を含む企業グループ全体、生産管理を含む企業の基幹業務全体をERPで管理している企業はどれ位あるのでしょうか?「グローバルで会計システムをERPで統一している」というのは、私にとっては本来のERPの定義とは異なります。

 

Resource

企業の資源とは何でしょうか?ひと昔前は「ヒト、モノ、カネ」という言葉が使われていたかと思います。ERPを導入していても「モノ」の管理は別の生産管理システムや倉庫管理システムで管理している企業が多く見受けられます。ERPは魔法の箱ではありませんので企業の全業務を枝葉末節までカバーしているのではありませんが(文書作成や表計算は専用ソフトを使った方がよっぽど効率的です)、企業内の基幹業務(すなわち、全ての枝が繋がっている「幹」の業務)においてはERPで管理することにより「ヒト、モノ、カネ」を効率的に管理することが出来るかと思います。

 

Planning

ERPは実行系のシステムと思われがちかと思います。では何故「Planning」という言葉が使われているのでしょうか?これもひと昔前の言葉で「PDCAサイクル:plan-do-check-actサイクル」というのが有りましたが、その「plan」するために必要なものは何でしょうか?占いでplanする企業にはERPは必要ないかもしれません。ほとんどの企業は「精緻で矛盾が無い実行データ」を元にplanしているかと思います。ERPは実行系業務を精緻で矛盾なく管理し、よりよい計画をする為の仕組みである、と私は思います。

※もちろんERP内にも様々な計画機能を持っています

 

以上、3つの単語を改めて考えてみた後で、もう一度質問です。ERPを導入済の会社の中でERPを「ERP」として使っている会社はどれ位あるのでしょうか?