2013年11月19日火曜日

【製造業の基幹システム #7 計画系システム】

私は製造業向けERPに関連する仕事に従事していますが、一般論としてERPは業務管理系のシステムであり、いわゆる「計画系」と呼ばれるシステムは別途構築する場合も多いかと思います。

狭義での「計画」機能はEnterprise Resource Planningという名の通り、ERP本体で需給計画や資源計画機能などを有しているかと思いますが、一般消費財の需要計画や複雑なグローバルサプライチェーン計画、計画の策定と評価や分析などには、各々の計画専用のシステムを活用することにより、より最適な「計画」を自動的に立案することも進んでいるかと思います。

・生産計画(APSPlanningScheduling
・プロジェクト計画
・配送(配車)計画
・購買(調達)計画
・(最適)在庫計画
・販売(需要)計画
・人員(配員)計画
・設備投資計画

・・・まだまだ沢山の○○計画がありますね。 

また、これらの計画機能をERP本体に有していたとしても、あえてERP外で計画した方が良い場合もあるかと思います。

例えば、
・複雑なシミュレーションを繰り返す為、ERP全体のパフォーマンスに影響を及ぼす
・商流や生産に直接関係しない人員計画
ERPで詳細定義をすると山のように会計仕訳を生成する
のような場合、計画機能はERPの外で処理した方がよいかもしれません。

要するに、ERPの導入にあたっては、
ERPにはより確定に近い状況のデータを処理する(現場を混乱させない)
ERPには在庫、会計に関わるデータを処理する(ムダなデータを蔓延させない)
ERPは幹の業務プロセスを管理する(枝葉をキレイに剪定する)
という基本指針が必要です。

ひと昔前は、これらの計画系アプリケーションとERPとの連携がネックとなっていたりしましたが、昨今ではアプリケーション連携技術も急速に発展、標準化されてきました。また、様々なアプリケーションをひとつのアプリケーションの様に「見せる」技術も発展し、「色々なアプリケーションを使い分けるのも面倒くさいなぁ」ということは減っているかと思います。

また、製造業向けERPに関しては、ERPで莫大な部品のMRPを回すと処理時間がかかるので、MRPだけ外出しのオン・メモリ高速MRPで処理するようなことも盛んに行われていました。これも昨今のオン・メモリDBの発展などによりERP自体が高速化していますので、単に高速化だけを実現するアプリケーションは衰退していくでしょう。

そのようなシステム的な制約よりも業務的な役割分担によりERPと計画系アプリケーションとの分担を決定することが多くなってきたからこそ、各計画系アプリケーションの本質を見極める必要性が高くなってきました。「早い/遅い」「出来る/出来ない」よりも「本質的にどちらで処理すべきか?」ということです。

すなわち、ERPを「精度が高い業務データを矛盾、重複なく流す」ことに徹し、それ以外の「流れない(行き先が無い)データ」「グルグル回っているだけのデータ」「ある時点のみをとらえたデータ」はERP外で管理すべき、だと私は思います。

2013年11月1日金曜日

【LNよもやま話 #13  MIRACLEから歴史が始まるLN技術】


LN関係者で、「MIRACLE」を知っている方は少ないのではないでしょうか。TritonTrimcsBMCSなどはこのブログにも書きましたが、MIRACLEについては未だどこにも書き起こしたことがありません。個人的には、このMIRACLEMachine Independent Risc Architecture Computer Language Environment)が無ければ現在のLNは無かったと思っています。 

ERPが普及した現在においても、グローバルで生産管理分野をERPで統一、統制している組立製造業は多くありません。それはなぜでしょう?

装置産業、プロセス製造業と比較すると、組立製造業の工場は、小規模であり、新設/移転が多く、製品/生産設備は一定ではありません。20年前と同じ場所で、同じ設備で、同じ部品を使って同じ製品を作っている組立製造業は亀の子たわし・・・他に何かありました?

そのような様々な環境変化に追従する必要があり、グローバルでシステム統一、統制することが一番難しいのが、組立製造業の生産管理システムだと思います(人事給与や税金系などの国ごとに規制・法令対応が必要なシステムはさておき)。

さて、ここで「MIRACLE」の登場です。LN生みの親であるBaan社はハードウェアやOSに依存しないアプリケーションを作ることを第一義に掲げ、各社UNIX上で動作する開発環境を作りました()。これが「MIRACLEMachine Independent Risc Architecture Computer Language Environment)」です。開発言語は「Baan 4GL」というC言語を発展させた独自言語です。データオリエンテッドな開発ツールで、データ構造を定義することにより、画面、帳票、グラフなどのプログラムを自動生成します。同時期にも様々な開発ツール(言語)がありましたが、その中でもMIRACLEのシステム開発生産性は非常に高いものでした。

)オランダで業務コンサルタントをしていた創業者Jan Baan(ヤン・バーン)は、渡米した際に黎明期のUNIXに触れ「これからはオープンシステムの時代が来る」と、一気にソフトウェアベンダーへかじ取りしました。

その後、Baan社がERP第一弾のTRITONをリリースした時、既にMIRACLEはバージョン4.3でした。LN関係者はピンときますね?

それゆえに、LN(業務系機能)はEnterprise Server(システム基盤)と各々のバージョンが違うのです。LNの最新バージョンは10.3ですが、システム内部のバージョンはLN :B61a9Enterprise Server:7.6a9です。わかり易く言うと、6.17.6です。

ちょっと話が散漫になりましたね。

この、MIRACLE改めTriton Tools改めBaan Tools改めLN Tools改め、LN Enterprise Serverの仕組みにより、5ユーザー(小さなWindowsサーバー)から数万ユーザー(UNIXハイエンドサーバー)までのスケーラビリティがあり、小さな町工場から巨大な工場までを、ひとつのERPでカバーできるのです。