狭義での「計画」機能はEnterprise Resource Planningという名の通り、ERP本体で需給計画や資源計画機能などを有しているかと思いますが、一般消費財の需要計画や複雑なグローバルサプライチェーン計画、計画の策定と評価や分析などには、各々の計画専用のシステムを活用することにより、より最適な「計画」を自動的に立案することも進んでいるかと思います。
・生産計画(APS、Planning、Scheduling)
・プロジェクト計画
・配送(配車)計画
・購買(調達)計画
・(最適)在庫計画
・販売(需要)計画
・人員(配員)計画
・設備投資計画
・・・まだまだ沢山の○○計画がありますね。
また、これらの計画機能をERP本体に有していたとしても、あえてERP外で計画した方が良い場合もあるかと思います。
例えば、
・複雑なシミュレーションを繰り返す為、ERP全体のパフォーマンスに影響を及ぼす
・商流や生産に直接関係しない人員計画
・ERPで詳細定義をすると山のように会計仕訳を生成する
のような場合、計画機能はERPの外で処理した方がよいかもしれません。
要するに、ERPの導入にあたっては、
・ERPにはより確定に近い状況のデータを処理する(現場を混乱させない)
・ERPには在庫、会計に関わるデータを処理する(ムダなデータを蔓延させない)
・ERPは幹の業務プロセスを管理する(枝葉をキレイに剪定する)
という基本指針が必要です。
ひと昔前は、これらの計画系アプリケーションとERPとの連携がネックとなっていたりしましたが、昨今ではアプリケーション連携技術も急速に発展、標準化されてきました。また、様々なアプリケーションをひとつのアプリケーションの様に「見せる」技術も発展し、「色々なアプリケーションを使い分けるのも面倒くさいなぁ」ということは減っているかと思います。
また、製造業向けERPに関しては、ERPで莫大な部品のMRPを回すと処理時間がかかるので、MRPだけ外出しのオン・メモリ高速MRPで処理するようなことも盛んに行われていました。これも昨今のオン・メモリDBの発展などによりERP自体が高速化していますので、単に高速化だけを実現するアプリケーションは衰退していくでしょう。
そのようなシステム的な制約よりも業務的な役割分担によりERPと計画系アプリケーションとの分担を決定することが多くなってきたからこそ、各計画系アプリケーションの本質を見極める必要性が高くなってきました。「早い/遅い」「出来る/出来ない」よりも「本質的にどちらで処理すべきか?」ということです。
すなわち、ERPを「精度が高い業務データを矛盾、重複なく流す」ことに徹し、それ以外の「流れない(行き先が無い)データ」「グルグル回っているだけのデータ」「ある時点のみをとらえたデータ」はERP外で管理すべき、だと私は思います。