2013年4月26日金曜日

【製造業の基幹システム #6 製造業のグローバル・システムの変遷】


ここ数年の製造業の基幹システムの新規実装および見直しの話(私の本業)は、海外拠点の話が非常に多くなってきています。もちろん業種業界によっては随分と前から海外に製造拠点、販売拠点、サービス拠点を設け、とっくの昔に海外売上の方が国内よりも多い企業というのはあったと思いますが、多くの企業においては(どちらかと言うと)海外拠点の基幹システムは(日本から見て)ほったらかしになっていたのではないでしょうか?

 

1980年代~90年代前半>

製造業の海外製造拠点は、自動車関連などに限定され国内向けはともかく、海外市場向け製品も国内で生産し輸出するという形態が主であった。また、海外製造拠点の基幹システムについても、システムらしいシステムは無く、紙、電話、FAX(テレックス)などが主な情報伝達、情報蓄積手段だった。図面、保存帳票などはマイクロフィルムも活用。

 

1990年代後半>

多くの業種で製造拠点の海外進出が進み、海外拠点の情報システムも、アプリケーションやネットワークの発達に伴い、基幹業務のシステム化が推進された。

まだ、グローバルでの情報一元管理や活用を行うには、システムインフラ(ハードウェア、ネットワーク)の性能(費用)がネックになり、拠点ごとにバラバラのシステムやExcelによるローカル管理になっている製造業も多かった。

 

2000年~2008年>

中堅規模の製造業でも、海外に生産拠点を設立したり、海外メーカーと協業、買収したり、グローバル・サプライチェーンの裾野が広がっていった。基幹システムにおいてもシステム・インフラの急速な発展により、グローバル最適化を基本にしたシステム構想を立案し、実現していった。コンサルティングファームやSIerは様々なグローバル・システム展開の方法論、手法、サービスメニューなどを開発したが、「ひとつのERPで統一」という手法が多かった。

 

2008年~2010年>

「ひとつのERPで全世界統一」という手法に対して、コスト、スピード、リスクなどの観点から別の手法を模索するようになった。設備投資の落ち込みはシステム投資にも波及し、その観点からも最小コストで自社に最適な基幹システム構築を模索していた。例えば2tier ERPやベストオブブリード、ハブ&スポークなど。

海外販社の基幹システムをクラウドで行う会社も出てきたが、海外生産拠点の基幹システムをクラウド化する事例はほとんどない。

 

2011年以降>

データ保有コストが下がったことによるビッグデータの活用やオン・メモリシステムの台頭、クラウドサービスの拡大、ソーシャル・ネットーワークの法人利用など、様々なITシステムの新テーマが出てきた。これは従来のシステム・インフラである基幹業務システムの業務機能的な成熟により、情報システム業界から仕掛けた面もある。

製造業の基幹システムにおいては、拠点進出時にその拠点の将来構想に応じて適切なERPパッケージを利用すること(「ExcelAccessでローカル管理」をしない)が常識となり、その上で基幹システムに様々な付加価値を求めている。

 

と、ここまで一般論的なことを書きましたが、要するに「10年前の常識は通用しない」ということです。私がERPに関わりはじめた90年台半ばには製造業側にもシステム屋にも「生産システムについて一家言あり」という人が沢山いました。以前の投稿でも書きましたが会計システムは答えがあるが生産システムには答えがありません。10年前までは「こういうおっちゃんがERP導入の障壁になるんだよな~」と生意気なことを思っていましたが、今は「こういうおっちゃんが居なくなったから日本の製造業(生産分野)におけるERP導入が進まないんだよな~」と思います。特に、伝統と歴史ある企業では、現在の生産システムのコンセプトや工場の文化について「俺が全く新しい仕組みを作ってやる!!!」という人をほとんど見なくなってしまいました。そういう時代の流れも日本の製造業の凋落に関連しているというのは言い過ぎでしょうか。

 

次回は、MRPAPSSCM、そしてS&OPなど計画系システムの話を書いてみようと思います。

2013年4月3日水曜日

【LNよもやま話 #9 導入テンプレート】


LN最新版には、Content Pack(※)という業務フロー(システムフロー)のひな型をオプションで提供していますが、これは「LNの莫大な機能を漏れなく使う」ために有用なものです。

(※)以前はEBMEnterprise Business ModelBaan5.0cLN 10.2.0)、HLMHybrid Logistics ModelBaan5.0b)、Reference ModelBaanIV)と呼ばれていました。名称は変わっていても基本的なコンセプトは同一です。

実際のERPの実装においては、LNの機能だけで隅から隅までカバーできる訳ではないので、他のアプリケーションと連携したり、LNの開発ツールを使ってアドオン開発したりします。

よっぽどの変人ではない限りは「毎度毎度同じ機能を開発するよりは、前回作った方ものを流用したほうが楽ちん」と考えますし、「一度作った仕組みを上手く商品化できないか?」と考える人もいるか思います。

そのような理由で、いくつかのパートナーがBaanを「安く、早く、確実に」導入するためのテンプレートを開発しました。代表的なテンプレートをご紹介します。

※このブログは宣伝目的ではないのであえて社名は伏せます。また、ここで紹介したテンプレートは過去に作成されたものであり、現時点での適用を保証するものではありません。個人的な思い出話として捉えて下さい。


<<A社のテンプレート「飛龍」(BaanIV短期導入テンプレート)>>

A社は、古くからのBaanユーザーであり自社導入事例をベースにした導入パートナーでもあります。自社拠点へのBaanIV導入成功事例をベースに「これ、他にも売れるんじゃないの???」というA社側の思いと、当時のバーン日本法人の戦略が一致し「飛龍」という中国っぽい(?)名称で売り出しました。

まずは中国の日系法人へ売りだそうと「中国Baan事例巡りツアー」をやったり、真っ赤な(中国っぽい)販促グッズを作ったり色々やりかけたところでSAAS騒動が・・・。

A社はLNの導入パートナーであり、色々なお客様のプロジェクトに参画しています。今でも、A社のLN導入にはDNAとしての「テンプレート指向」があります。


<<B社のテンプレート(Baan5導入方法論&アドオンパック)>>

B社もA社と同様に古くからのBaanユーザーでありパートナーです。B社はエンタープライズアプリケーションに非常に力を入れ、「B社と言えばBaanBaanと言えばB社」と言われていました。

1990年代、B社はBaanをなめ尽くすように研究していました。前回ご紹介したBaan導入方法論「Target Enterprise」や前述のContent Pack(以前は「EBM」「Reference Model」)についても、マニュアルがぼろぼろになるまで、しかも相当な人数で根ほり葉ほり研究していました。

そしてBaan5ベースのテンプレート(生産形態別業務・システムフロー&アドオンパック)を完成させました。私は実物を見たことがあるのですが、マニュアルだけでも超大作です。


LNは、単なる業務プログラムの集合体ではなく、コンセプトや方法論に基づいたERPですので上手く導入するパートナー様がいるからこそ、本来の価値が生きてきます。

私も時々「究極のテンプレート」を作ってみようかという衝動にかられます。1人で作ると100年かかるかもしれませんが。