○○○にはアルファベット3文字が入ります。ERPでもSCMでもSOXでも色々と当てはまる文字はあるかと思います。前回も書きましたが会計・人事アプリケーションと違って、生産管理や販売管理の世界に正解はありません。脈々と受け継がれてきた管理手法や手順が時代と共に変化しながら、その時代に最適なものへと生まれ変わります。
何事も変化しようとする時には、その変化の主導権を握ろうとするために新しい言葉が生まれます。CADやCAMは相当古い言葉ですが、PDMやPOP、MESなども既に古い言葉かと思います。ERPやSCM、CRM、CPM、EAM・・・製造業に関連する言葉だけでも相当な略語があります。これらの3文字には「教義」が存在し、教祖様(言い出しっぺ)と宣教師(業界ゴロ)が存在します。
「ERP」の教祖はさておき、その宣教師たちは各々の所属する会社、団体が有利になるように教義を解釈し、宣教していました。
・ERPを導入しないと不幸になる
・ERPを導入するとバラ色の将来が約束される
・ERPは管理会計の仕組みだ
・ERPはヒト・モノ・カネを最適化する仕組みだ
・ERPは人事管理の仕組みだ
・ERPを使うと決算が早くなる
・ERPには経営判断の為のデータが入っている
・ERPを導入すると在庫が削減される
・ERPを導入すると納期が短縮される
・ERPを導入すると利益率が向上する
・ERPによってグローバルスタンダードになる
・ERPにお任せあれ~
上記のどれが真実なのかは、ここでは触れません。私を含め90年代からERPに関わっていた人間は、このような文句を垂れながら宣教にいそしんでいました。
ここで話はガラリと変わりますが、「満員電車」という古い日本映画(1957年製作)をご覧になったことはありますか?ERPに関わっている方は必見です。主人公が新卒で勤めた大会社(ビール製造会社)での仕事は、手書き伝票を元帳へ転記する仕事です。来る日も来る日も右から左へ数字を書き写しているだけです。それも大人数で机を並べて朝から晩まで転記です。まさに「人間ERP」です。
私自身がERP導入に関わったお客様で手書きの仕訳伝票からERPに移行した会社が1社だけ有ります。経理部員は各部署から回ってくる売上伝票や仕入伝票を仕訳伝票に記帳し輪ゴムで束ねて会計事務所へ送り、一月ごとに月次B/S、P/L、総勘定元帳、などが会計事務所から送られてくる・・・という仕事がERP導入によって全く無くなりました。
もうひとつ似たようなエピソードを思い出しました。20年ほど前の話です。ERPではありませんが共通費の部門別配賦の仕組みをシステム化したことがありました。これは単純な計算の繰返しなので、人間がやると面倒だけれどもコンピュータ(計算機)は最も得意な分野です。システム化以前は、この道ウン十年の経理部員が算盤(そろばん)で計算していたのですが、さてシステムが完成し実データを使った最終テストで段ボール3箱分の計算過程のデータが吐き出されました。ベテラン経理課員は、全ての縦計、横計を算盤で検証した後に「計算、合ってるね・・・」と寂しそうに去っていきました。
話を元に戻すと・・・
私は、ERPは「ビジネスインフラ」だと思います。携帯電話やスマートフォン、パソコン、コピー機、ボールペン、ハサミ、作業机・・・の、様なものです。普通に身の回りに存在し、色々なメーカーの多種多様なものがあり、無くても仕事は出来るけど無いと困る様なものです。
「ウチの会社はERPなくても困ってないし」
という会社もあるかもしれません。きっとERP(のようなもの)を手組みで作っているか、業務別のパッケージを組み合わせて使っているのでしょう。もしかすると「人間ERP」かもしれません。
「ウチの家は水道引かなくても井戸掘るから困ってないし」
どうぞ掘って下さい。
次回は、インド人技術者の話を書いてみようと思います。