2012年11月27日火曜日

【製造業の基幹システム #4 ○○○という名の宗教】

○○○にはアルファベット3文字が入ります。ERPでもSCMでもSOXでも色々と当てはまる文字はあるかと思います。前回も書きましたが会計・人事アプリケーションと違って、生産管理や販売管理の世界に正解はありません。脈々と受け継がれてきた管理手法や手順が時代と共に変化しながら、その時代に最適なものへと生まれ変わります。

何事も変化しようとする時には、その変化の主導権を握ろうとするために新しい言葉が生まれます。CADCAMは相当古い言葉ですが、PDMPOPMESなども既に古い言葉かと思います。ERPSCMCRMCPMEAM・・・製造業に関連する言葉だけでも相当な略語があります。これらの3文字には「教義」が存在し、教祖様(言い出しっぺ)と宣教師(業界ゴロ)が存在します。

ERP」の教祖はさておき、その宣教師たちは各々の所属する会社、団体が有利になるように教義を解釈し、宣教していました。
ERPを導入しないと不幸になる
ERPを導入するとバラ色の将来が約束される
ERPは管理会計の仕組みだ
ERPはヒト・モノ・カネを最適化する仕組みだ
ERPは人事管理の仕組みだ
ERPを使うと決算が早くなる
ERPには経営判断の為のデータが入っている
ERPを導入すると在庫が削減される
ERPを導入すると納期が短縮される
ERPを導入すると利益率が向上する
ERPによってグローバルスタンダードになる
ERPにお任せあれ~

上記のどれが真実なのかは、ここでは触れません。私を含め90年代からERPに関わっていた人間は、このような文句を垂れながら宣教にいそしんでいました。

ここで話はガラリと変わりますが、「満員電車」という古い日本映画(1957年製作)をご覧になったことはありますか?ERPに関わっている方は必見です。主人公が新卒で勤めた大会社(ビール製造会社)での仕事は、手書き伝票を元帳へ転記する仕事です。来る日も来る日も右から左へ数字を書き写しているだけです。それも大人数で机を並べて朝から晩まで転記です。まさに「人間ERP」です。
私自身がERP導入に関わったお客様で手書きの仕訳伝票からERPに移行した会社が1社だけ有ります。経理部員は各部署から回ってくる売上伝票や仕入伝票を仕訳伝票に記帳し輪ゴムで束ねて会計事務所へ送り、一月ごとに月次B/SP/L、総勘定元帳、などが会計事務所から送られてくる・・・という仕事がERP導入によって全く無くなりました。

もうひとつ似たようなエピソードを思い出しました。20年ほど前の話です。ERPではありませんが共通費の部門別配賦の仕組みをシステム化したことがありました。これは単純な計算の繰返しなので、人間がやると面倒だけれどもコンピュータ(計算機)は最も得意な分野です。システム化以前は、この道ウン十年の経理部員が算盤(そろばん)で計算していたのですが、さてシステムが完成し実データを使った最終テストで段ボール3箱分の計算過程のデータが吐き出されました。ベテラン経理課員は、全ての縦計、横計を算盤で検証した後に「計算、合ってるね・・・」と寂しそうに去っていきました。

話を元に戻すと・・・
私は、ERPは「ビジネスインフラ」だと思います。携帯電話やスマートフォン、パソコン、コピー機、ボールペン、ハサミ、作業机・・・の、様なものです。普通に身の回りに存在し、色々なメーカーの多種多様なものがあり、無くても仕事は出来るけど無いと困る様なものです。
「ウチの会社はERPなくても困ってないし」
という会社もあるかもしれません。きっとERP(のようなもの)を手組みで作っているか、業務別のパッケージを組み合わせて使っているのでしょう。もしかすると「人間ERP」かもしれません。
「ウチの家は水道引かなくても井戸掘るから困ってないし」
どうぞ掘って下さい。

次回は、インド人技術者の話を書いてみようと思います。

2012年11月16日金曜日

【LNよもやま話 #6 Dynamic Enterprise Modeler】

今回はLNBaan)の特長のひとつである「DEM」をご紹介します。
DEMとは「Dynamic Enterprise Modeler(方法論として呼ぶ時は「Modeling」)」の略称です。
「えっ!?『ダイナミック・エンタープライズ』をモデリングするの!?」と思われた方、正解です。
「『エンタープライズ・モデリング』を動的に!?」と思われた方も正解です。
「『ダイナミック・エンタープライズ』って何???」「モデリング???」って方、今回は全然面白くありませんので読み飛ばして下さい。

本来、「ERP」とはエンタープライズのリソースをプランニングするアプリケーション・ソフトウェアですから、最初に「エンタープライズ」をモデリングする必要があります。簡単に言うと自社内外のモノとカネと情報の流れを定義します。
さて、モデリングをどうやって実施しましょうか?紙に書きますか?何かのツールを使いますか?従来の業務モデルや業務フローをそのまま書き出しますか?
そこで登場するのが「DEM」です。DEMはモデリング・ツールであり、モデリング方法論でもあります。
DEMでやること、出来ること>
1.自社内外および、自社拠点間のモノとカネ、情報の流れをお絵描き
2.LN導入拠点ごとに拠点内のモノとカネ、情報の流れをお絵描き
3.情報の流れに応じてLNの各機能とのマッピング
4.(必要に応じて)組織(役割)ごとにLNのデータアクセス権限を定義
5.(必要に応じて)個人ごとのLNメニューを生成

・・・国内外に数十拠点もあるような企業が上記のことをやろうとすると大変な労力を要します。
そこで活躍するのが「EBMEnterprise Business Model)」です。これは、上記の2.と3.のひな型です。ビジネスケース(見込生産、受注生産・・・)ごとに業務プロセスフローがお絵描き済になっています。
「インフォアが作った業務プロセスにはとらわれたくない?」・・・そんな製造業にはEBMは必要ありませんが、製造業向けERPとして世界一高機能なLNを使いこなすことが出来ますか? LNの膨大な機能についてアプリケーション・コンサルタントから全部説明してもらいますか?

と、DEMの良いメリットをつらつらと書きましたが、中堅・中小企業へのLN導入の時にはDEMを使わない方が安く早く導入できる場合もあります。DEMは「複雑に絡み合っている企業の仕組みをシステムに落とす」ためのものですので、最初からシンプルな仕組みの企業へのLN導入に対するDEM効果は小さいです。

ちなみに、DEMは、大昔はオルグウェア(Orgware)と呼んでいました。オルグウェアのプロモーションビデオを見たことが有る人は少ないと思いますが、宇宙ステーションがドッキングするような映像によって業務プロセスがきっちりかっちり組み立てられていく様子を表現してしたものでした。

なお、英語版Wikipediaの「Dynamic Enterprise Modeling」の項には、結構詳細な説明が記載されています。

次回は、【LNよもやま話 #7 そう言えば昔はこういうのがあったっけ?(仮題)】をお伝えしたいと思います。