例えばインフォア社にはOPIM(One Point Implementation Methodology)という導入方法論があります。これにはERPの導入において必要なタスクを漏れなく定義されていますが、これさえあれば、全てのERP導入プロジェクト計画が出来上がりという訳ではありません。
ERP導入プロジェクト体制を立案するに当たり、
・文化
・予算
・歴史
などを考慮する必要があります。よって、全く同じスコープで同じ導入規模であっても導入に関わる外部費用は大きく異なる可能性があります。
例えば、企業文化(体質)は最も大きく導入体制や、費用に関係する事項かもしれません。ERP導入に最も適さないのは「縦割りで丸投げ」文化です。事業の全体像を分かっていて(部分最適では無く)全体最適を目指して「有るべき姿」を描くとこができ、意思決定し、実行することが出来る人は誰もいないかもしれません。このようなERP導入の根幹に関わるような事項を外部のコンサルタントに委託することも可能ですが、このようなコンサルタントは非常に高価です。しかしながら、ここでケチると必ずERP導入は失敗します。自社の文化は「風通しがよく、部門間の隔たりがなく、自由に意見を言える環境で、親分肌のマネジメント層も沢山いる」という企業は、外部コンサルタントはアドバイザー的な役割でよいかと思います。
そうは言っても、予算には限界が有りますから、「お絵描き」や「資料作り」をばかりをやっている優秀(で高価)な外部コンサルタントを沢山雇っても、いつまでもERPは稼働しません。「有るべき姿」に対して、ERPをシミュレーションして、実際にERP上で業務が運用できるかどうかを検証する必要があります。もしも自社でそのような「手足」としてのリソースが不足するようであれば、これも外部から調達する必要があります。
また、企業の歴史もERP導入体制に影響を与える要素のひとつです。「大きく変化し続けた歴史が我が社の歴史」という企業はERP導入が最も容易な企業かもしれません。変化を経験し、その変化にどのように対応したかというノウハウはERP導入に際して貴重な経験です。もし自社内にそのような人材がいるのであれば、プロジェクトに是非とも参画させるべきです。もし、自社の歴史において大きな変化もなく、そのような経験をした人材もいないのであれば、「企業が変化する時に何が起きるか?」を分かっているコンサルタントを参画させるべきでしょう。
もちろん、「ERPとは何か?」を分かっている人材、導入するERPの詳細を理解し、説明出来る人材も必要です。一般的には、ERP導入プロジェクト初期段階で自社プロジェクト中心メンバーがERP機能のトレーニングを受講しますが、数週間から数カ月でERPの隅々まで理解できる程ERPは甘くありません。そこで、ERPを熟知したアプリケーションコンサルタントを外部に委託することになります。
さて、ここまで述べたことをまとめると
1.将来像を描き、変化を予測することが出来る「頭脳」
2.黙々とシステムを検証する「体力」
3.ERPの機能を知り尽くした「知識」
の3つにおいて、自社リソースに不足している分を外部から補うことでERP導入体制が完成します。
もちろん、自社業務を理解している人材をプロジェクトに参画させることは必須です。この人材は外部から調達することはできません。
え?自社業務を理解している人が居ない?
ERP導入は、もう少し後にした方が良いかもしれません。